目が覚めたら、自分のいつもの部屋だった。
 「夢、だったのかしら?」今日子には、はっきりとした記憶がなかった。體験が、曖昧に浮かんでくる。
 「はっ、たけしは」コミュニケーターを探すが、なかった。

 「また、わたしは、一人ぼっち」あんなやつでも、楽しかった。
 カレンダーを見ると、今日も日曜日だった。 

 家に継母は、いなかった。一人でいる家は、寂しい。今日子は、家を出て、あの時あった公園に向かった。

 「夢だなんて、・・・ひどい」ブランコを軽く揺らしながら、そうつぶやいた。

 「お嬢ちゃん、ちょっといいかい?」
黒ずくめの男が、今日子に語りかけてきた。
 「なんですか?」
 「君にお姉さんは、いないか?」
 「いません。」
 男は、そうかと言って、去った。

 全身に身震いが襲った。あれは、タゲットだ。こちらの世界に來たんだ。

 「よっ元気か?」見知らぬ中學生が聲をかけてきた。
 「たけし?」そう言って、今日子はブランコから、立ち上がった。

 「どうしていなくなったのよ?」今日子は尋ねた。
 「想像以上に、君の力は、強い。だが、相手も武力を整えつつある。だから、また戻ってきた。」

 「クルチャーは、次次と刺客を送り込んでくる。」
 「わたしは、もう戦いたくない」今日子は言った。

 たけしは、腰を落として、目を合わせてきた。
 「お兄さんは、あちらにいる。會いたくないか」
 「會いたい、會いたい」今日子は、祈るように叫んだ。
 「そのためには、あの世界を、探しに行かなくては、いけない。お兄さんは、リーダーとして、クルチャーと戦っている。」

 「なんで、なんで戦っているの?」今日子は尋ねた。
 「バーチャルワールドは、拡張してきている。リアリティワールドを、飲み込むかもしれない。そうなったら、この世界は、終わりだ。」

 「たけし、なんで今教えてくれてるの」
 「君の力を認めた。バーチャルリアリティワールドでは、君は20歳だ。それで、さっきのタゲットも気づかなかった。それに、初めから、話しても、信じられないと思う。俺は、お前のデジタルお兄さんだ。」

 「お兄さん」また、悲しい思いが、あふれてきた。今日子は、泣いた。
 たけしは、そっと抱きしめた。
 「今のうちに、泣いとけ。泣ける分だけ全部」と言って、背中をポンポンと叩いた。

 「なるほど、そういうことだったのか?」とタゲットが言った。茂みに隠れていた。

 「タゲット」今日子は、震えた。今は小學生だ。そして現実世界。ここでは、負けてしまう。

 タゲットは、元の姿に変身した。
 「そんな、倒したはずなのに?」今日子は言った。

 たけしが言った。「俺のそばを、離れるな」
 「何の能力もないお前に、俺が倒せるのか。」と言ってタゲットは、笑った。
 「だから、コイツを使う」銃口をタゲットに向けた。

 「俺は、不死身だ。」そう言って、近づいてきた。
 ぱん、ぱん、パパンとタゲットの心臓に3発命中した。
 タゲットは、のけぞったものの、平気だった。

 そこへ、空間の歪みから、スコープオンが出てきた。
 「スコープオン、君がきたのか?」たけしは言った。
 「リーダーからの命令だ」

 「アシャしゃしゃ、副リーダーが來るとはな」タゲットが言った。

 「この世界では、お前の力は、つかえまい」
 「スコープオン、何十回目の戦いかな?」とタゲットは笑った。

 「俺がきたのは、今日子の力を、この世界でも、使える様にするためだ。」

 「わたしの力?」と今日子は言った。
 スコープオン「たけし、剣になれ!」
 たけしは、人間の姿から、剣になった。

 今日子は、その剣を握った。力が、湧いてくる。
 「化け物、今度こそ冥土に送ってやる。」
 「同じ手は、食わんぞ」と言いつつも、戦闘体勢に、タゲットは、入った。

 「どうすれば」今日子は、考えた。
 タゲットは、今度3本の剣を振り回している。

 「伸びろー」と今日子が言ったら、如意棒のように、剣が伸びて、タゲットの頭に刺さった。

 「グエ、しかし、やられたのは、サブ基盤だ。メイン基盤は、動いてる」タゲットは、そう言って、突進してきた。

 スコープオンが、なにかを唱えた。
 「何?足が動かない。魔導士のせいか?」
 
 「あちらの世界に、飛ぶぞ?」スコープオンが言うと同時に、今日子、たけし、スコープオンは、姿を消した。