警察官が、スマートウォッチに紙が、はさんであるのに、気がついた。

 それをみた警官は、「ちょっと出かけてくる」と相棒に言って、今日子を追いかけた。

 「今日子ちゃん」警官が、呼び止めた。
 「なんですか?」今日子は、なぜ、呼ばれたか、わからない。
 「今日子ちゃん、これ、あなたの大切なものじゃないか?」警官が諭すように、言った。
 今日子は、知らないおじさんにもらったというと、面倒くさくなると思って、
 「私のものじゃ、ありません」と答えた。
 「じゃあ、この紙に書かれたものは、嘘か?」
 「紙?」そう言って、紙を取った。
 「今日子へ 兄より」それだけだった。
 「私の兄は、一年前に亡くなりました。」それだけ言うのが、精一杯だった。
 「おじさんも、わからんが、君が持っておくべきだ。取っときなさい」
 「はい」と答え、今日子は、コミュニケーターを受け取った。

 警官と別れて、機械に話しかけて見た。が、なにも喋らない。
 「何よ、このへんちくりん。」手に持ってぐるぐる回した。

「あっけに取られた顔してんな!」たけしが、居眠りから、起きた。正確に言うとスリープから目覚めた。

 「たけし、なんか私に隠してない?」と今日子は尋ねた。
 「知らねー」とたけしが答えた。
 2回目のしらねーに今日子の怒りが爆発した。
 「海に投げ捨ててやる」

「お兄さんのことは、いいのかよ?」とたけしは、尋ねた。

「お兄さん」と一言言うと、今日子は、嗚咽(おえつ)した。その場に、座り込んでしまった。

「どうして、死んじゃったの、お兄さん」と気持ちが、膨らんできた。

そこに、高校生ぐらいの3人の若者が、絡んできた。
 「お嬢ちゃん、そのスマートウォッチ、俺にくれないか?」

 今日子は、周りを見回したが、誰もいない。
 「はい」と言って、高校生に渡した。
 「ついでに、お金もくれよ?」要求がエスカレートした。
 「お金は、持ってません」と今日子は返答した。
 「嘘つくんじゃねえ、こんな高級なスマートウォッチ持ってるじゃないか」と言って、時計をぐるぐる回した。
 「こいつをくらえ」とたけしが言って、スタンガンのような電流が高校生に流れた。高校生は、意識を失って倒れた。それをみた二人は、怖くなって逃げた。

 「今日子、早くこの場から、離れるぞ!」とたけしが言った。
 今日子は、スマートウォッチを取り戻して、その場を急いで、立ち去った。

 「頼りがい、あるんだ、たけし」と今日子が言った。するとスマートウォッチは、なにも言わない。感が鋭い今日子は、スマートウォッチをぐるぐる回した。
 「昼寝中に、起こすんじゃない。」とたけしが不満そうに言った。

 「これでも、俺を捨てるか?」とたけしが尋ねた。
 「そうね、しばらくの間、つきあってあげる」と今日子は、自慢げに言った。

 こうして、謎は、明かされぬまま、終わった。