「村だ。少し休もう」とたけしが言った。しかしながら、さっきの船の人たちが、全滅したことに、ショックを受けている今日子は、黙っていた。
 その時に生き残った、6歳の女の子も一緒に歩いている。名前は、コレンヌと言う。

 「あのことは、お前の責任ではなく、敵が強くなってきただけだ。」たけしは、繰り返し、慰めた。
 
 空には、ハゲタカが、3匹まっていた。みるみるうちに、ハイタゲットに変わった。
 「ハイタゲット!」今日子の口調は、悔しさに燃えていた。
 「コレンヌ、離れてなさい」と今日子は言うと、防御円をコレンヌに張った。
 
 「旨そうだな、この人間。」ハイタゲットの一人が言った。ハイタゲットの武器は、槍。三方に今日子を捉えた。
 「この」と言って、剣から小刀を出しても、全く当たらない。

 「今までの手は、使えない」今日子は、そう言って、逃げた。

 「おい、人間が襲われているぞ!」村からの人間達が叫んだ。
 「助けて」今日子は、村人に救いを求めた。
 奥の方から、20代と見える女性が、先陣に立った。
 追ってきたハイタゲットたちは、いっせいに、動きが止まった。
 「身体が動かん!」
 「今よ、打ちなさい。」
 村人達は、矢を、幾つも放った。ハイタゲットは、元のハゲタカに戻った。

 「貴女は誰?」と村の女神、アナスイが今日子に尋ねた。
 「私は、この世界にいる兄を探しにきたの」と今日子は言った。

 「その男は?」と再度アナスイは、尋ねた。
 「用心棒だ。」とたけしが答えた。とともに、「休息と食料を、貰えないだろうか?」とお願いした。
 「お前らは、怪しい。」とアナスイは言いながら、
 「このもの達を、牢屋へ入れろ!ただし、食料は、与えていい」と村人に、指示した。
 二人は、強靭とした牢屋に、入れられた。
 「コレンヌだけが、頼りだ。」たけしが言った。
 「もう、疲れた。元の世界に戻りたい」と今日子は言ったら、
 「やはり、あの世界から、きたのか。」とそばで耳立てていたアナスイが、今日子に言った。
 「貴女は、帰りたく無いの?」今日子がアナスイに尋ねた。」
 「私の身体は、あちらの世界のには、無い。だから、この世界を変えるしかない、いや、邪悪神から、救いたい。」とアナスイが答えた。
 「この世界は、なんのために、存在しているの?」今日子のそもそもの疑問だった。
 「私にも、わからない。でも、ここは、邪悪神が支配している世界なのは、間違い無い」とアナスイは、答えた。

 「私たちを、ここから、出して、お願い」と今日子は、懇願した。
 「ダメだ。もうすぐ、多くのハイタゲット達が、攻撃してくる。そんな時に、二人の女神は、いらない」

 「それに、兄に会いたいだけのお前に、この世界が、救えるか?」アナスイは、言った。
 その言葉に、今日子は、ショックを受けた。確かに、その通りだった。闘う理由は、他にない。 
 たけしが、反論した。
 「この人は、そんな単純じゃ無いよ。まだ、力の半分も、使い切れて無いが、いずれ、目覚めた時は、この世界を変える。」
 そう、たけしに言われて、今日子は
 「ありがとう」と言った。

 「夜襲だ。多勢のハイタゲットが、こちらに向かっている」と見張りの村人が、村全体に聴こえるように、叫んだ。

 「とにかく、お前達は、出すわけにはいかない」とアナスイは言って、その場から、去った。

 戦況は、村人達の劣勢だった。アナスイは、敵の指揮官と対峙していた。
 「ここから先は、いかせぬ」アナスイが、ハイタゲットの動きを止めようとしたが、効かない。
 「そのぐらいの力で」と言ってハイタゲットは、アナスイに切り掛かった。

 すると、アナスイの周りを防御円が守った。
 「これは、まさか?」ハイタゲットは、そう言った。
 「ハイタゲット、今日で終わりにしてやる」牢屋を脱出した今日子達が、そこにいた。
 「笑止、お前に何ができる。」ハイタゲットは、せせら笑った。
 「たけし、戦闘機になれ!」
 「おいおい、使ってくれるぜ。」
 空からの絨毯爆撃に、指揮官を除くハイタゲットは、全滅した。
 指揮官と今日子は、対峙した。
 「これでも喰らえ」と先ほどの身動きが取れない力を放った。
 「もはや、動けまい。切って切り刻んでやる」
 「こっちよ」
と言われて、ふり返ると、もう一人の今日子が、剣を構えていた。
 「残念ね」右上から左下に、切った。
 「お前は、一体」
 たけしが、尋ねた。
 「分身の術でも、使ったか?」
 「もう一人は、幻影。この技は、とても疲れるわ。」今日子は、その場に座り込んだ。
 「牢屋に入れて、悪かった。」とアナスイが今日子に、謝った。」
 そして
 「できれば、この村にとどまってほしい」との提案を断って、この村を、後にした。