その後も百合は毎日、必ず朝と夜には航にラインをした。その度、航は返信をしてくれた。百合の想いは募る。
一方、航はそんな百合からのラインが日課になっており、朝は百合で始まり、百合で夜が終わる。そんな日々になっていった。航の中で、百合の存在が確立されていく。
その日の百合は部の飲み会。居酒屋・古都。いつもより長い一次会が終わる、そんな時。1人の女性が酔いつぶれてしまった。1人では立てそうにも、ましてや帰れそうにもない。しかもその女性は部内で一番遠い所に住んでいた。
皆、介抱しているようでしていない。きっと百合が面倒を見てくれるだろう、皆そう思っていた。そしてそれに百合は気づいていた。大人し過ぎる百合。
「私が、送ります…。」
百合は場の雰囲気を全て飲んだ。
その女性を自宅まで送った頃には最寄り駅までの終電がなくなっていた。それも百合はわかっていた。最寄り駅の少し手前の駅までなら電車がまだあったため、その駅まで行ってそこからタクシーで帰った。
暗い夜道。情けない気持ちと悲しい気持ちを引きずりながら、百合は帰った。アパートに着いた百合。気づけば日付が変わり果てていた。電気も付けず、ベッドに倒れこむ。目を閉じ深いため息をし、目を開けた。そして。
「あ!航さん!」
百合は勢いよく起き上がる。航におやすみとラインをするいつもの時間帯は過ぎている。
「もう…寝てるよね…。」
そう言う百合の目には涙が浮かんでいた。情けない、悲しい、悔しい、惨め。
百合は航に電話をする。その気持ちが恋しいというものだと知らずに。航は寝ているであろう遅い時間。電話をして、けむたがれても航に何をどう思われてもいいと、百合は思った。その時の百合はそれほど航が恋しかった。そして航は電話に出た。
「もしもし?あんた今日どうしたんだよ?どっか行ってたのか?」
航は百合からのラインを待っていたかのように言った。さらに涙が溢れる百合。しかし百合は、何をどう言えばいいか、何からどう伝えればいいかわからなかった。
「航…さん…?」
「…なんだ?…泣いてんのか?なんかあったのか?」
「航さん…私…。」
言葉が喉で詰まる百合。
「なんだよ、言えよ。言わなきゃわかんねぇだろ?」
何も言うことができず泣く百合。涙が止まりそうにない百合に航はもどかしくなる。しかし百合の性格、百合の震える姿を航は思い出した。航は百合を思いやる。
「…何も言えねぇなら代わりに泣け、思いっ切り泣け…。」
百合は泣いた。それは静かに。その間、航はずっと百合の涙を聞いていた。時々、百合は航の名を呼びながら。時々、航は百合に声を掛けながら。言葉の代わりに、いくつもの涙を百合は流した。そしてそれを航は全て受け止めた。
目はまだ潤んでいるが、百合の涙が落ち着き始めた。
「明日、仕事休め。」
「でも…。」
「こんな時間にそんなんじゃつらいだろ。」
「いえ…。」
航はため息をする。百合を心配するため息だ。
「あんた無理してないか?」
「無理…?」
「そうだよ。周りに流されたり合わせたりしてんじゃねーか?無理なら無理、それでいいんだよ。」
航の言う通りだった。
「言われたことはあるけど…どうしたらいいか…。」
「あんた人が良すぎるんだろうな、自分で精一杯なのによ。もっと自分を大事にしろよ。」
「大事に…って…?」
「自分を第一に考えるんだよ。人のことなんてどーだっていい。誰にどう思われたっていいじゃねぇか。だから人の目が気になるんだよ。」
「あ…だから…。」
「そうだ。あんた自分のこと大事にしてるか?」
百合の胸に突き刺さる言葉。
「…大事に、してない…。」
百合の潤んでいた目から涙がこぼれた。航はまたため息をつく。
「だろーな。」
「…私…。」
「いーじゃねぇか。無理なものは無理ってこと、わかっただろ?」
「はい…。」
「で、明日、仕事はどうするんだ?」
「休みます…。」
「それでいいんだよ。」
航の一語一語が胸に沁みる百合。ずっと話していたかった。航が側にいるようで。
ラインの代わりに電話でおやすみを言おうと思った百合。しかし、この電話を終わらせたくなかった。勇気をくれた航の励まし、航の癒しとやさしさ、航への想い、疲労。すでに百合は半分夢の中にいた。呟くように囁くように、百合の口から自然とこぼれた。
「航さん…好き…です…。」
そう言った後、百合は夢の中へ。航に届いていたのかどうか、わからない程の小さな声。
一方、航はそんな百合からのラインが日課になっており、朝は百合で始まり、百合で夜が終わる。そんな日々になっていった。航の中で、百合の存在が確立されていく。
その日の百合は部の飲み会。居酒屋・古都。いつもより長い一次会が終わる、そんな時。1人の女性が酔いつぶれてしまった。1人では立てそうにも、ましてや帰れそうにもない。しかもその女性は部内で一番遠い所に住んでいた。
皆、介抱しているようでしていない。きっと百合が面倒を見てくれるだろう、皆そう思っていた。そしてそれに百合は気づいていた。大人し過ぎる百合。
「私が、送ります…。」
百合は場の雰囲気を全て飲んだ。
その女性を自宅まで送った頃には最寄り駅までの終電がなくなっていた。それも百合はわかっていた。最寄り駅の少し手前の駅までなら電車がまだあったため、その駅まで行ってそこからタクシーで帰った。
暗い夜道。情けない気持ちと悲しい気持ちを引きずりながら、百合は帰った。アパートに着いた百合。気づけば日付が変わり果てていた。電気も付けず、ベッドに倒れこむ。目を閉じ深いため息をし、目を開けた。そして。
「あ!航さん!」
百合は勢いよく起き上がる。航におやすみとラインをするいつもの時間帯は過ぎている。
「もう…寝てるよね…。」
そう言う百合の目には涙が浮かんでいた。情けない、悲しい、悔しい、惨め。
百合は航に電話をする。その気持ちが恋しいというものだと知らずに。航は寝ているであろう遅い時間。電話をして、けむたがれても航に何をどう思われてもいいと、百合は思った。その時の百合はそれほど航が恋しかった。そして航は電話に出た。
「もしもし?あんた今日どうしたんだよ?どっか行ってたのか?」
航は百合からのラインを待っていたかのように言った。さらに涙が溢れる百合。しかし百合は、何をどう言えばいいか、何からどう伝えればいいかわからなかった。
「航…さん…?」
「…なんだ?…泣いてんのか?なんかあったのか?」
「航さん…私…。」
言葉が喉で詰まる百合。
「なんだよ、言えよ。言わなきゃわかんねぇだろ?」
何も言うことができず泣く百合。涙が止まりそうにない百合に航はもどかしくなる。しかし百合の性格、百合の震える姿を航は思い出した。航は百合を思いやる。
「…何も言えねぇなら代わりに泣け、思いっ切り泣け…。」
百合は泣いた。それは静かに。その間、航はずっと百合の涙を聞いていた。時々、百合は航の名を呼びながら。時々、航は百合に声を掛けながら。言葉の代わりに、いくつもの涙を百合は流した。そしてそれを航は全て受け止めた。
目はまだ潤んでいるが、百合の涙が落ち着き始めた。
「明日、仕事休め。」
「でも…。」
「こんな時間にそんなんじゃつらいだろ。」
「いえ…。」
航はため息をする。百合を心配するため息だ。
「あんた無理してないか?」
「無理…?」
「そうだよ。周りに流されたり合わせたりしてんじゃねーか?無理なら無理、それでいいんだよ。」
航の言う通りだった。
「言われたことはあるけど…どうしたらいいか…。」
「あんた人が良すぎるんだろうな、自分で精一杯なのによ。もっと自分を大事にしろよ。」
「大事に…って…?」
「自分を第一に考えるんだよ。人のことなんてどーだっていい。誰にどう思われたっていいじゃねぇか。だから人の目が気になるんだよ。」
「あ…だから…。」
「そうだ。あんた自分のこと大事にしてるか?」
百合の胸に突き刺さる言葉。
「…大事に、してない…。」
百合の潤んでいた目から涙がこぼれた。航はまたため息をつく。
「だろーな。」
「…私…。」
「いーじゃねぇか。無理なものは無理ってこと、わかっただろ?」
「はい…。」
「で、明日、仕事はどうするんだ?」
「休みます…。」
「それでいいんだよ。」
航の一語一語が胸に沁みる百合。ずっと話していたかった。航が側にいるようで。
ラインの代わりに電話でおやすみを言おうと思った百合。しかし、この電話を終わらせたくなかった。勇気をくれた航の励まし、航の癒しとやさしさ、航への想い、疲労。すでに百合は半分夢の中にいた。呟くように囁くように、百合の口から自然とこぼれた。
「航さん…好き…です…。」
そう言った後、百合は夢の中へ。航に届いていたのかどうか、わからない程の小さな声。