ふたりは航の先輩の店「コント・ド・フェ」。 シェフが食後のコーヒーを持ってきてくれた。
「おめでとう。航、百合ちゃん。」
「ありがとうございます、先輩。」
「航。」
「はい。」
「これからは1人の体じゃない。百合ちゃんを、ふたりのことを考えて生きてくんだぞ。」
「はい、頑張ります。ありがとうございます。」
「それから百合ちゃん。」
「はい。」
「航のやつ、寂しがり屋なところあるけど、大目に見てやってね。」
「先輩、そんなこと…。」
「はい、大丈夫です。」
百合はにこっと返事をした。恥ずかしがる航。
いつもの香ばしい香りのコーヒーを一口飲んで、百合は思ってしまった。
「航さん。」
「ん?」
「…いえ…やっぱり何でもないです…。」
「何でもなくないし、今は言える顔をしてる。なんだ。オレが怖いか?」
百合は顔を赤くする。航のやさしい目。百合は素直になってしまう。
「航さんは、いつから結婚を考えてたんですか…?私と…。」
航は百合をじっと見る。
「いつから…。」
頭を抱え始める航。
「んー…。」
「そんなに…考えることなら…い、言わなくていいです…。」
「うまく言えねぇ…。」
「じゃあ、これだけは言えるってこと、何かありますか…?」
航は頭から手を離し、テーブルに置いた。そっと話し出す。
「あんたと会う前…。次惚れた女のことは、一生守ろうと思った。それで百合、あんたと出会った。でも…そんなの関係なくて、あんただったからかもしれない…。んー…、やっぱよくわかんねぇな…。」
「それだけで、充分です…。ありがとうございます…。」
「あ、でも…、あんたがオレを選んでくれた時、この店で。そん時には考えてたかもしれないな。」
「その…時…?」
「そうだ。悪いか?」
「いえ、悪くないです…。嬉しいです…。」
百合は手を口に添え、小さく笑った。
「百合。」
「はい、何ですか?」
航は百合を見つめる。強く、儚い目。
「オレはあんたが思ってるほど強くはない。泣いてるあんたを抱きしめることくらいしか、オレにはできないだろう。でも…。」
「航さん?」
「百合、オレの話を…。」
「航さん。」
百合も負けじと強い目で航を見る。
「航さん、誰かと航さんを比べてませんか?誰かは強くて、航さんは強くない。誰かにはできるけど、航さんにはできない。そう私には聞こえます。間違ってますか?」
ハッとする航。百合の言う通りだった。航は無意識のうちに比べていた。
「亮さん…ですか…?」
航は開いた口が塞がらない。口に手を当てる。
「航さん、私に言ってくれました。『強くなっても弱くなっても私は私』って。『普通もまとももあるとしても百合は百合だ』って。それは私も同じです。航さんは航さんで、その航さんが私は好き…。私はどんな航さんになっても、私は航さんなんです。ずっと変わらない…。そういうことが、愛するって、ことなんじゃないですか…?」
「百合…。」
「はい…。」
「オレはまたあんたに気づかされた…。やっぱりオレにはあんたが必要だ。」
航は百合の手を握る。ふたりは見つめ合う。
「ずっと一緒にいてくれ。」
百合は透き通るガラス玉のような目。
「航さんに、私の全てを捧げます。受け取って、くれますか?」
航は笑って言った。
「捧げられる前に奪ってやる。」
百合も笑う。ふたりは笑い合った。
シェフに礼を言い、帰る百合の手には百合の花束。手をつないで帰る帰り道。
「航さん?」
「なんだ?」
「航さんは、私に色んなことを教えてくれました。」
「何も教えてなんかねーよ。」
「人と接すること、人と仲良くなること、人を好きになること、人を愛すること…。間違ってるかもしれないし、まだよく見えないけど、私は私なりに想ってます。」
百合は足を止める。航も止まる。
「航さん?」
「ん?」
「愛してる。」
暗い夜道。百合の目が透き通っているのがわかる。キスをするふたり。
「早く帰ろう。」
「はい。」
「早く続きをしよう。」
「え?」
後輩とその恋人、こそこそ覗き見したキス。
「おめでとう。航、百合ちゃん。」
「ありがとうございます、先輩。」
「航。」
「はい。」
「これからは1人の体じゃない。百合ちゃんを、ふたりのことを考えて生きてくんだぞ。」
「はい、頑張ります。ありがとうございます。」
「それから百合ちゃん。」
「はい。」
「航のやつ、寂しがり屋なところあるけど、大目に見てやってね。」
「先輩、そんなこと…。」
「はい、大丈夫です。」
百合はにこっと返事をした。恥ずかしがる航。
いつもの香ばしい香りのコーヒーを一口飲んで、百合は思ってしまった。
「航さん。」
「ん?」
「…いえ…やっぱり何でもないです…。」
「何でもなくないし、今は言える顔をしてる。なんだ。オレが怖いか?」
百合は顔を赤くする。航のやさしい目。百合は素直になってしまう。
「航さんは、いつから結婚を考えてたんですか…?私と…。」
航は百合をじっと見る。
「いつから…。」
頭を抱え始める航。
「んー…。」
「そんなに…考えることなら…い、言わなくていいです…。」
「うまく言えねぇ…。」
「じゃあ、これだけは言えるってこと、何かありますか…?」
航は頭から手を離し、テーブルに置いた。そっと話し出す。
「あんたと会う前…。次惚れた女のことは、一生守ろうと思った。それで百合、あんたと出会った。でも…そんなの関係なくて、あんただったからかもしれない…。んー…、やっぱよくわかんねぇな…。」
「それだけで、充分です…。ありがとうございます…。」
「あ、でも…、あんたがオレを選んでくれた時、この店で。そん時には考えてたかもしれないな。」
「その…時…?」
「そうだ。悪いか?」
「いえ、悪くないです…。嬉しいです…。」
百合は手を口に添え、小さく笑った。
「百合。」
「はい、何ですか?」
航は百合を見つめる。強く、儚い目。
「オレはあんたが思ってるほど強くはない。泣いてるあんたを抱きしめることくらいしか、オレにはできないだろう。でも…。」
「航さん?」
「百合、オレの話を…。」
「航さん。」
百合も負けじと強い目で航を見る。
「航さん、誰かと航さんを比べてませんか?誰かは強くて、航さんは強くない。誰かにはできるけど、航さんにはできない。そう私には聞こえます。間違ってますか?」
ハッとする航。百合の言う通りだった。航は無意識のうちに比べていた。
「亮さん…ですか…?」
航は開いた口が塞がらない。口に手を当てる。
「航さん、私に言ってくれました。『強くなっても弱くなっても私は私』って。『普通もまとももあるとしても百合は百合だ』って。それは私も同じです。航さんは航さんで、その航さんが私は好き…。私はどんな航さんになっても、私は航さんなんです。ずっと変わらない…。そういうことが、愛するって、ことなんじゃないですか…?」
「百合…。」
「はい…。」
「オレはまたあんたに気づかされた…。やっぱりオレにはあんたが必要だ。」
航は百合の手を握る。ふたりは見つめ合う。
「ずっと一緒にいてくれ。」
百合は透き通るガラス玉のような目。
「航さんに、私の全てを捧げます。受け取って、くれますか?」
航は笑って言った。
「捧げられる前に奪ってやる。」
百合も笑う。ふたりは笑い合った。
シェフに礼を言い、帰る百合の手には百合の花束。手をつないで帰る帰り道。
「航さん?」
「なんだ?」
「航さんは、私に色んなことを教えてくれました。」
「何も教えてなんかねーよ。」
「人と接すること、人と仲良くなること、人を好きになること、人を愛すること…。間違ってるかもしれないし、まだよく見えないけど、私は私なりに想ってます。」
百合は足を止める。航も止まる。
「航さん?」
「ん?」
「愛してる。」
暗い夜道。百合の目が透き通っているのがわかる。キスをするふたり。
「早く帰ろう。」
「はい。」
「早く続きをしよう。」
「え?」
後輩とその恋人、こそこそ覗き見したキス。