休日、百合の部屋。外は寒いが、とても良い天気の日。日差しが心地良かった。暖かい春まで、あと少し。

 百合は昼食時の食器の洗い物をしていた。航にプレゼントされたエプロンをしながら。航はリビング。普段はろくに見ないテレビをつけっぱなし。航は百合を呼ぶ。

「おい!百合!」
「はーい。」
「あんたは何歳で結婚したいんだ?今テレビでやってるんだよ。街頭インタビューってやつ…。」

 ガシャンッ

 皿と皿がぶつかる音。航は急いで百合のもとへ。百合の肩に手を添える。

「大丈夫か?指、切ってないか?」
「けっ…こん…。」

 航は目線を上げる。百合は表情も体も強ばり、小さく震えていた。航はやさしい声。

「どうした?」
「けっこん…。」
「そうだ、結婚だ。あんたは何歳だ?」

 しばらく震える百合。次第に様子が変わっていく。固まっていた百合の体が溶け始め、全身の力が抜けていく。百合は正面を見たまま。生気のない目をし、生気のない声で答えた。

「…結婚って、何なの…?って…。結婚なんて…してもしなくても、どっちでも…どうでもいいじゃないって…。そもそも私には、結婚なんかない…。そう…感じてました…。…航さんと…出会うまで…。」

 航は百合の後ろに立つ。力の抜けた、百合の肩を抱きしめる。いつものやさしい声で、航は告げた。

「結婚しよう。」

 百合は止まる。止まった記憶をさかのぼる。

「…え…?」
「聞こえただろ?」
「…私…が…?」
「そうだ。」
「航…さんと…?」
「そうだ。結婚しよう、百合。な?」

 百合は洗い物の途中。濡れた手で、航の腕をゆっくり握る。そして小さな、でも確かな返事を、百合はした。

「はい…。」

 航の腕にひとつの雫が落ちた。百合の目からこぼれた涙。航はさらに強く、百合の肩を抱きしめた。

 気持ちがひとつになった瞬間。

 後輩とその恋人、航と百合のふたりの願い事を、こそこそ固く結んだ昼下がり。