夜。百合は、航のお弁当用ノートを開く。
「【バレンタイン】ケーキ、生チョコ、トリュフ、マカロン…。」
思い付いたものを箇条書きに書き込んでいく。
「あ…航さんに、これ作ろ…。あと何か…ないかな…。クッキー…クッキー…?」
後日、百合は近くのデパートへ。バレンタインの特設コーナー。百合の入る隙間もないくらいの女性の数。呆気に取られる百合。
「…こんなに、すごいの…?」
百合は初めてバレンタインの準備をする。様々なものを買い集めた。気合いを入れ、想いを込めて準備をする。楽しさを通り越し、充実した時間。
2月14日。百合は大きな紙袋を持ち、航の工場へ向かった。工場の門の前、深呼吸をする百合。敷地に一歩入った。
「失礼します…。」
するとすぐ、百合は後ろから声を掛けられる。
「お嬢ちゃん。何してるんだ、ここで。」
「あ…。」
どこかで見たことのある人物だった。百合は記憶をさかのぼり、思い出す。友江の披露宴、航の隣に座って航と楽しそうに話していた人物、工場の社長だった。
「あ!もしかして、こちらの社長で…?」
「あぁ、そうだけど…どうしたんだい、ここはお嬢ちゃんが来るような所じゃねぇぞ?」
「も、申し遅れました!私、降谷百合と申します。それで私…。」
航は仕事を終え、事務所のある建物へいつものように入る。
「お疲れ様で…。」
「先輩!あざっす!」
「は?何がだよ。とっとと帰れ。」
「ユリさん!来ましたよ航さん!」
「何言ってんだ、お前ら。」
後輩たちに、訳のわからないことを言われる航。休憩スペースに進むと、見慣れた姿、百合がいるのを見た。航は驚き、凝視する。
「あ!航さん!」
「…あんた…なんでここに…。」
「待ってました。お疲れ様です。」
作業着の航。会えて嬉しい百合はにこっとする。
「待ってましたじゃねーよ…。なんでここにいんだよ…。」
「バレンタイン。皆さんに、おすそ分けです。」
百合は、可愛らしくラッピングし、小分けしたクッキーを従業員に配っていた。そんな従業員たちを見ながら航は言う。
「おすそ分けって、ふざけんなよ…。」
取り巻き達が騒ぐ。
「やさしーっすねー!先輩の彼女!」
「俺これでやっと1個…ありがてぇ…。」
「お前らまで…ふざけんな…。」
「先輩!後のことは俺らやるんで、先輩は先上がってください!」
追い出される、航と百合。航の機嫌は良くなかった。
「とりあえず、着替えてくる…。そこのベンチに座ってろ。」
「はい。」
百合は外の古びたベンチに座り、大人しく航を待っていた。着替えが終わり、更衣室から出てきた航は、やはり機嫌が悪かった。
「お疲れ様です、航さん。行きましょう。」
笑顔の百合。航は何も言わず進む。手もつないでくれない航に、百合は自分から手をつないだ。百合から笑顔が消える。手もつないでいるのに静かな寂しい、ふたりの帰り道。百合のアパートに着く。
「航さんは座っててください。」
「来い。」
航は百合を呼んだ。何を言われるか、想像はついている百合。それでも怖いものは怖かった。向かい合わせにうつむいて座るふたり。しばらく何も言わない航。百合の緊張感が高まった。
「【バレンタイン】ケーキ、生チョコ、トリュフ、マカロン…。」
思い付いたものを箇条書きに書き込んでいく。
「あ…航さんに、これ作ろ…。あと何か…ないかな…。クッキー…クッキー…?」
後日、百合は近くのデパートへ。バレンタインの特設コーナー。百合の入る隙間もないくらいの女性の数。呆気に取られる百合。
「…こんなに、すごいの…?」
百合は初めてバレンタインの準備をする。様々なものを買い集めた。気合いを入れ、想いを込めて準備をする。楽しさを通り越し、充実した時間。
2月14日。百合は大きな紙袋を持ち、航の工場へ向かった。工場の門の前、深呼吸をする百合。敷地に一歩入った。
「失礼します…。」
するとすぐ、百合は後ろから声を掛けられる。
「お嬢ちゃん。何してるんだ、ここで。」
「あ…。」
どこかで見たことのある人物だった。百合は記憶をさかのぼり、思い出す。友江の披露宴、航の隣に座って航と楽しそうに話していた人物、工場の社長だった。
「あ!もしかして、こちらの社長で…?」
「あぁ、そうだけど…どうしたんだい、ここはお嬢ちゃんが来るような所じゃねぇぞ?」
「も、申し遅れました!私、降谷百合と申します。それで私…。」
航は仕事を終え、事務所のある建物へいつものように入る。
「お疲れ様で…。」
「先輩!あざっす!」
「は?何がだよ。とっとと帰れ。」
「ユリさん!来ましたよ航さん!」
「何言ってんだ、お前ら。」
後輩たちに、訳のわからないことを言われる航。休憩スペースに進むと、見慣れた姿、百合がいるのを見た。航は驚き、凝視する。
「あ!航さん!」
「…あんた…なんでここに…。」
「待ってました。お疲れ様です。」
作業着の航。会えて嬉しい百合はにこっとする。
「待ってましたじゃねーよ…。なんでここにいんだよ…。」
「バレンタイン。皆さんに、おすそ分けです。」
百合は、可愛らしくラッピングし、小分けしたクッキーを従業員に配っていた。そんな従業員たちを見ながら航は言う。
「おすそ分けって、ふざけんなよ…。」
取り巻き達が騒ぐ。
「やさしーっすねー!先輩の彼女!」
「俺これでやっと1個…ありがてぇ…。」
「お前らまで…ふざけんな…。」
「先輩!後のことは俺らやるんで、先輩は先上がってください!」
追い出される、航と百合。航の機嫌は良くなかった。
「とりあえず、着替えてくる…。そこのベンチに座ってろ。」
「はい。」
百合は外の古びたベンチに座り、大人しく航を待っていた。着替えが終わり、更衣室から出てきた航は、やはり機嫌が悪かった。
「お疲れ様です、航さん。行きましょう。」
笑顔の百合。航は何も言わず進む。手もつないでくれない航に、百合は自分から手をつないだ。百合から笑顔が消える。手もつないでいるのに静かな寂しい、ふたりの帰り道。百合のアパートに着く。
「航さんは座っててください。」
「来い。」
航は百合を呼んだ。何を言われるか、想像はついている百合。それでも怖いものは怖かった。向かい合わせにうつむいて座るふたり。しばらく何も言わない航。百合の緊張感が高まった。