店に入り、テーブルに焼き鳥とビール。ふたりは乾杯する。
「処女卒業おめでとう。」
「航さん!そういうこと、こういう所で言わないでください…。」
「ここは何でもありだ。心配すんな。」
「でも…。」
「あー女抱いた後の酒はうまい。」
「航さん!」
「だから気にすんなって。」
拗ねた顔した百合は、焼き鳥を食べるとすぐに笑顔になった。
「おいしい。」
百合の怒る顔、拗ねる顔、笑う顔。航はずっと見ていた。それに気づかない百合。
「昨日、あんたすげーエロかった。」
咳き込む百合。
「航さん!」
航は百合を無視し、話を続ける。
「あんなことしてエロくならない女もいないだろうけど、あんたもエロかった。エロかったけど、すげーきれいだったんだよ。体、顔、肌、髪、声。すげーきれいだった。あんたみたいなきれいな女、他にいねぇよ。」
百合は驚きを超え、動転する。声を失う。航は話を続けた。
「オレはあんたの全部を見た、体も心も。あんたは正真正銘の美人だ。だから全部欲しいと思った。今のあんたも、これからも。」
「航さん、私は…私はずっと航さんなんです。初めから変わりません。だから昨日だって、航さんだったから…。だから私は…。」
想いが多すぎて言葉が出ない百合。航に伝えたいのに伝えられない。
「私は…。」
「もういい。」
「よくないです。私は、もっと航さんに感謝しなきゃだめです。でも何て言ったらいいか…言葉が出てこない…。もっと航さんに…。」
「そういうところも好きなんだよ。他の誰んとこにも行くな。な?」
百合の目に涙が浮かぶ。
「はい…行きません…。」
航は百合の頭をなでる。
「ありがとな。」
そして泣き出す百合。声を出しながら。
「おい、こんな所でそんな泣くな。」
「何でもありって、言ったじゃないですか…。」
向かい合わせで座っていたふたり。航は立ち上がり、百合の横に座った。
「これで少しは落ち着くか?」
百合は航の袖を両手で握り、頭をつける。
「落ち着きません!」
航は百合の肩を包む。百合らしさごと包んでいた。
お腹も心も満たされたふたり。アパートに帰り、部屋に入る。航はふとその存在に気づく。ベッド側の壁に貼られた一枚の紙。ふたりはベッドの上に座り、見ていた。
「このイベントの一覧。日付、書けるとこあるんじゃねーか?」
「はい…。」
「忘れてたのかよ。」
「いえ…。それを書いた時は、いつまで航さんと一緒にいられるかわからないと思ってたので、書くだけ書いて、気にしないようにしてたんです。ただ、書いてみたかっただけかもしれないです。」
物憂げな顔の百合。そんな思いをしながら百合はこれを書いていた。航はそれをその時初めて知る。その百合を想像した。航は始める。
「出会った日…出会った日?いつだ?」
「友江先輩の結婚式です。」
「じゃあ、付き合った日は?」
「それがわからないんです。私、手帳も日記もないので…。」
「あ…先輩に聞けばいいのか。ふたりで先輩の店に行った日だ。それから次は、初キス。」
「花火の…日…です。」
「ん?その次がないぞ?大事なのが抜けてる。ペン貸せ。」
「はい…。」
百合はペンを渡す。そして航は一覧に書き足す。
初体験
「えっ。」
「大事だろ?」
「んー…。」
「わざと書かなかったんだろ。」
航にはわかっていた。一覧から目をそらす百合。焦るかのようだった。
「もう目はそらさないんじゃなかったのか?」
百合は自分の言葉を思い出す。航に気づかされた。ゆっくり百合は航を見る。そして宣言した。
「初体験は昨日です!」
「女子にとっては大事な日だろ?」
それを聞いて百合は疑問に思った。
「じゃあ、男子にとっては大事じゃないんですか?」
航は百合をじっと見る。
「女にはわかんねーよ。」
「じゃあどうして航さんは女子の気持ちがわかるんですか?」
「教えねー。」
「航さんだけずるいです。教えてください。」
「教えねーよ。」
「航さん!」
「それ以上言ったら顔に落書きするぞ。このペン、油性だよな…。」
「航さん!ずるいです!」
いつまでもじゃれあうふたり。
「処女卒業おめでとう。」
「航さん!そういうこと、こういう所で言わないでください…。」
「ここは何でもありだ。心配すんな。」
「でも…。」
「あー女抱いた後の酒はうまい。」
「航さん!」
「だから気にすんなって。」
拗ねた顔した百合は、焼き鳥を食べるとすぐに笑顔になった。
「おいしい。」
百合の怒る顔、拗ねる顔、笑う顔。航はずっと見ていた。それに気づかない百合。
「昨日、あんたすげーエロかった。」
咳き込む百合。
「航さん!」
航は百合を無視し、話を続ける。
「あんなことしてエロくならない女もいないだろうけど、あんたもエロかった。エロかったけど、すげーきれいだったんだよ。体、顔、肌、髪、声。すげーきれいだった。あんたみたいなきれいな女、他にいねぇよ。」
百合は驚きを超え、動転する。声を失う。航は話を続けた。
「オレはあんたの全部を見た、体も心も。あんたは正真正銘の美人だ。だから全部欲しいと思った。今のあんたも、これからも。」
「航さん、私は…私はずっと航さんなんです。初めから変わりません。だから昨日だって、航さんだったから…。だから私は…。」
想いが多すぎて言葉が出ない百合。航に伝えたいのに伝えられない。
「私は…。」
「もういい。」
「よくないです。私は、もっと航さんに感謝しなきゃだめです。でも何て言ったらいいか…言葉が出てこない…。もっと航さんに…。」
「そういうところも好きなんだよ。他の誰んとこにも行くな。な?」
百合の目に涙が浮かぶ。
「はい…行きません…。」
航は百合の頭をなでる。
「ありがとな。」
そして泣き出す百合。声を出しながら。
「おい、こんな所でそんな泣くな。」
「何でもありって、言ったじゃないですか…。」
向かい合わせで座っていたふたり。航は立ち上がり、百合の横に座った。
「これで少しは落ち着くか?」
百合は航の袖を両手で握り、頭をつける。
「落ち着きません!」
航は百合の肩を包む。百合らしさごと包んでいた。
お腹も心も満たされたふたり。アパートに帰り、部屋に入る。航はふとその存在に気づく。ベッド側の壁に貼られた一枚の紙。ふたりはベッドの上に座り、見ていた。
「このイベントの一覧。日付、書けるとこあるんじゃねーか?」
「はい…。」
「忘れてたのかよ。」
「いえ…。それを書いた時は、いつまで航さんと一緒にいられるかわからないと思ってたので、書くだけ書いて、気にしないようにしてたんです。ただ、書いてみたかっただけかもしれないです。」
物憂げな顔の百合。そんな思いをしながら百合はこれを書いていた。航はそれをその時初めて知る。その百合を想像した。航は始める。
「出会った日…出会った日?いつだ?」
「友江先輩の結婚式です。」
「じゃあ、付き合った日は?」
「それがわからないんです。私、手帳も日記もないので…。」
「あ…先輩に聞けばいいのか。ふたりで先輩の店に行った日だ。それから次は、初キス。」
「花火の…日…です。」
「ん?その次がないぞ?大事なのが抜けてる。ペン貸せ。」
「はい…。」
百合はペンを渡す。そして航は一覧に書き足す。
初体験
「えっ。」
「大事だろ?」
「んー…。」
「わざと書かなかったんだろ。」
航にはわかっていた。一覧から目をそらす百合。焦るかのようだった。
「もう目はそらさないんじゃなかったのか?」
百合は自分の言葉を思い出す。航に気づかされた。ゆっくり百合は航を見る。そして宣言した。
「初体験は昨日です!」
「女子にとっては大事な日だろ?」
それを聞いて百合は疑問に思った。
「じゃあ、男子にとっては大事じゃないんですか?」
航は百合をじっと見る。
「女にはわかんねーよ。」
「じゃあどうして航さんは女子の気持ちがわかるんですか?」
「教えねー。」
「航さんだけずるいです。教えてください。」
「教えねーよ。」
「航さん!」
「それ以上言ったら顔に落書きするぞ。このペン、油性だよな…。」
「航さん!ずるいです!」
いつまでもじゃれあうふたり。