平日。終業後、ひとりで百合はまたデパートの手芸コーナー。百合は航のため、またこそつく。
「今度は色々必要なんだよなぁ…。売ってるかな…。」
布を探す。デニムの生地、レザー調の生地。他にも色々見て回り、買い物を済ませてアパートに帰る。ネットで見たものを、見様見真似で作り始めた。黙々と作り、一休みする。
「今日はここまでかな…。」
そして一息入れた後。百合はテーブルの前、正座をする。テーブルの上には真っ白な紙が一枚。百合は少しだけ物憂げな顔をしている。書くだけ書いてみようと、百合はやっとペンを取った。
一緒にするイベント
上に大きな文字で書く。その下に、季節ごとのイベントや記念日を思いつく限り書いていった。それぞれの横にチェック欄も書く。余ったスペースには適当に絵を描いた。桜の木、ビーチ、赤い紅葉、クリスマスツリーなど。かわいいイラストだった。真っ白だった紙が彩られる。一年はおろか、一ヶ月後も航といられるかどうか自信のない百合。イベントを書いた紙をそっと置く。ため息をついた。
「今日はもう…寝よう…。」
航におやすみのラインをする。返事が返ってきた。スマホを握りながら、百合は眠る。
その頃、航は自分の部屋。荷造りをしながら考えていた。
「小さい頃、学校で…。楽しそうに話してたから、いじめじゃない…。じゃあ何だ…。」
航もため息をつく。ふたり、ため息の夜。
そして楽しい週末がやってきた。百合は航を待つ。インターホンが鳴る。
「はい!」
百合はドアを開く。航がいた。
「来たぞ。」
「はい、待ってました。」
笑顔になるふたり。航は前回のように息を切らしてはいなかった。
「ドア開けてくれないか?」
「は、はい!」
航は段ボール箱を持ってきた。前回のように、百合の部屋の空いているスペースに荷物を置く航。航はすぐに箱を開けた。
「航さん!今日は私が開けます!」
航は既に箱を開け、何かををポイポイ投げるように出す。
「航さん!待ってください!」
「これは昔集めてた古着だ。ちゃんと一度洗ってきた。」
航が出していたのは古着だった。Tシャツ、シャツ、トレーナー。少しくすんだ、色とりどりの古着。古着を買ったことのない百合はじっと見る。
「後で自分で畳んでくれ。めんどくさかった。」
古着の山。百合は一枚拡げて見た。
「航さんの…着てた…服…。」
その百合を見た航は言う。
「におい嗅いだりすんなよ。」
「そ、そんなこと!しません!」
「着てもいいぞ。寝巻くらいにはなるだろ。でかいだろうからな。」
自分のために言ってくれた言葉なのか、ふと出た言葉なのか、どっちなのかわからない百合。しかしどっちでも嬉しかった。これを着れば、心の痛みが和らぐのではないかと思った。百合の目に涙が浮かぶ。手に持っているものをぎゅっと握りしめた。
「毎日、着ます…。」
百合は涙を隠すように、手に持っていたTシャツを持って脱衣所へ向かった。Tシャツを着る百合。航のぬくもりを感じたような気がした。百合は脱衣所から戻る。その姿を見て航は言った。
「やっぱりでかいな。まぁ好きなようにしてくれ。」
「はい…。その前に畳まないと…。何枚あるんだろ…。」
百合がぶつぶつ言っていると、航は新しい何かを出していた。
「今度は何ですか?」
「CDだ。これも古いやつだな。」
「航さんは服も音楽も好きだったんですね。」
「そんなことねーよ。興味持ったもん、少しかじっただけだ。…棚がねぇから、また床に積むか。」
百合は一枚一枚見る。また新しく航を知ることができる。かっこいいジャケットのCDばかりだった。
「こんなもんだ。今日は軽かった。あー腹減った。」
「じゃあ、用意しますね。」
百合はキッチンへ、航は特等席へ。テーブルの上にはいつものように、青い箸置きと薄い紫色のペアグラス、そしてネームプレート。その隣には赤い箸置きと薄いピンク色のグラス。そしていつもはない、目立った一枚の紙があった。航はその紙を手に取る。
「おい!何だよ、これ!」
航はリビングからキッチンの百合を呼ぶ。
「何ですかー?」
「こっち来いよ!」
百合はリビングへ。航が持っていたのは、『一緒にするイベント』の紙だった。
「あ…、一覧にしてみました。子供な項目もありますけど…参考までに…。」
「もし足りないもんあったら書くぞ。」
「はい、お願いします…。」
「これ、どこか貼っておこう。」
航は部屋を見渡す。ベッドのある壁に貼った。
「テレビのあるほうに貼ってもいいけど、こっちのほうがでかく見える。」
「はい…。」
「花火は見たからチェックできるじゃねーか。それから…出会った日…?付き合った日?初キス?…あんたガキかよ…。」
「どこかで見かけただけで…だから参考までに…。」
呆れる航と恥ずかしい百合。
「今度は色々必要なんだよなぁ…。売ってるかな…。」
布を探す。デニムの生地、レザー調の生地。他にも色々見て回り、買い物を済ませてアパートに帰る。ネットで見たものを、見様見真似で作り始めた。黙々と作り、一休みする。
「今日はここまでかな…。」
そして一息入れた後。百合はテーブルの前、正座をする。テーブルの上には真っ白な紙が一枚。百合は少しだけ物憂げな顔をしている。書くだけ書いてみようと、百合はやっとペンを取った。
一緒にするイベント
上に大きな文字で書く。その下に、季節ごとのイベントや記念日を思いつく限り書いていった。それぞれの横にチェック欄も書く。余ったスペースには適当に絵を描いた。桜の木、ビーチ、赤い紅葉、クリスマスツリーなど。かわいいイラストだった。真っ白だった紙が彩られる。一年はおろか、一ヶ月後も航といられるかどうか自信のない百合。イベントを書いた紙をそっと置く。ため息をついた。
「今日はもう…寝よう…。」
航におやすみのラインをする。返事が返ってきた。スマホを握りながら、百合は眠る。
その頃、航は自分の部屋。荷造りをしながら考えていた。
「小さい頃、学校で…。楽しそうに話してたから、いじめじゃない…。じゃあ何だ…。」
航もため息をつく。ふたり、ため息の夜。
そして楽しい週末がやってきた。百合は航を待つ。インターホンが鳴る。
「はい!」
百合はドアを開く。航がいた。
「来たぞ。」
「はい、待ってました。」
笑顔になるふたり。航は前回のように息を切らしてはいなかった。
「ドア開けてくれないか?」
「は、はい!」
航は段ボール箱を持ってきた。前回のように、百合の部屋の空いているスペースに荷物を置く航。航はすぐに箱を開けた。
「航さん!今日は私が開けます!」
航は既に箱を開け、何かををポイポイ投げるように出す。
「航さん!待ってください!」
「これは昔集めてた古着だ。ちゃんと一度洗ってきた。」
航が出していたのは古着だった。Tシャツ、シャツ、トレーナー。少しくすんだ、色とりどりの古着。古着を買ったことのない百合はじっと見る。
「後で自分で畳んでくれ。めんどくさかった。」
古着の山。百合は一枚拡げて見た。
「航さんの…着てた…服…。」
その百合を見た航は言う。
「におい嗅いだりすんなよ。」
「そ、そんなこと!しません!」
「着てもいいぞ。寝巻くらいにはなるだろ。でかいだろうからな。」
自分のために言ってくれた言葉なのか、ふと出た言葉なのか、どっちなのかわからない百合。しかしどっちでも嬉しかった。これを着れば、心の痛みが和らぐのではないかと思った。百合の目に涙が浮かぶ。手に持っているものをぎゅっと握りしめた。
「毎日、着ます…。」
百合は涙を隠すように、手に持っていたTシャツを持って脱衣所へ向かった。Tシャツを着る百合。航のぬくもりを感じたような気がした。百合は脱衣所から戻る。その姿を見て航は言った。
「やっぱりでかいな。まぁ好きなようにしてくれ。」
「はい…。その前に畳まないと…。何枚あるんだろ…。」
百合がぶつぶつ言っていると、航は新しい何かを出していた。
「今度は何ですか?」
「CDだ。これも古いやつだな。」
「航さんは服も音楽も好きだったんですね。」
「そんなことねーよ。興味持ったもん、少しかじっただけだ。…棚がねぇから、また床に積むか。」
百合は一枚一枚見る。また新しく航を知ることができる。かっこいいジャケットのCDばかりだった。
「こんなもんだ。今日は軽かった。あー腹減った。」
「じゃあ、用意しますね。」
百合はキッチンへ、航は特等席へ。テーブルの上にはいつものように、青い箸置きと薄い紫色のペアグラス、そしてネームプレート。その隣には赤い箸置きと薄いピンク色のグラス。そしていつもはない、目立った一枚の紙があった。航はその紙を手に取る。
「おい!何だよ、これ!」
航はリビングからキッチンの百合を呼ぶ。
「何ですかー?」
「こっち来いよ!」
百合はリビングへ。航が持っていたのは、『一緒にするイベント』の紙だった。
「あ…、一覧にしてみました。子供な項目もありますけど…参考までに…。」
「もし足りないもんあったら書くぞ。」
「はい、お願いします…。」
「これ、どこか貼っておこう。」
航は部屋を見渡す。ベッドのある壁に貼った。
「テレビのあるほうに貼ってもいいけど、こっちのほうがでかく見える。」
「はい…。」
「花火は見たからチェックできるじゃねーか。それから…出会った日…?付き合った日?初キス?…あんたガキかよ…。」
「どこかで見かけただけで…だから参考までに…。」
呆れる航と恥ずかしい百合。