3人は飲んで話して時間が進む。3人、一息ついた時。葵が突然言った。

「私も報告しようかな。ユリの話の後で、申し訳ないんだけど…。」
「え…何ですか?どうしたんですか?」

 百合は心配になる。舞はすぐに言った。

「どうしたの?急に。何かあった?」

 すると葵はニコッとし、答える。

「私、別れた。彼と。」

 百合も舞も驚く。突然のことだった。

「え…?」
「別れたって…、3年付き合ってた人でしょ?」
「そう。」

 葵はずっと清々しい顔をしていた。舞は心配する。

「…どうしたの?何かあったの?特に悪い話、最近全然なかったでしょ?」
「うん、ない。何もない。」
「じゃあ、どうして?」

 葵は百合に向かって言う。

「ユリ。初めに言っておく。ユリは何も考えないで。」
「?どういうことですか?」

 葵は話す。出来事を、気持ちを。

「彼とは3年。一緒にいたけど、いつも何もはっきりしない。私が何か言ってもちゃんとした返事してくれなかったり、ケンカしても話し合いにもならない。ダラダラ付き合ってるなとは思ってた。そんな時にユリと会ってユリを見てきて。ユリっていつも一生懸命なんだよね、何に対しても。それでね、彼と一緒にいて彼を見た時、ふと思ったの。私この人に一生懸命になんて、もうなれないんじゃないかって。」

 百合は言葉が出ない。その代わりを舞がする。

「そんなのまだわからないじゃない。今は少し…初心みたいなのを忘れてるだけかもよ?初心て誰だってすぐ忘れがちだし…。」
「初心ね…でももし初心を取り戻したとしても…、同じことを繰り返すだけだと思う。時間の無駄だと思ったの。そう思ったら、もう終わりかなってね。」
「葵…。早く言ってくれればよかったのに…。本当にいいの?」
「早くも何も…ほんと、ふと思ったの。」

 葵は自分より百合が心配だった。葵が百合を見ると百合は震えていた、今にも泣き出しそうな目で。優しく葵は言った。

「ユリ、何も考えないでって言ったでしょ?」
「…だって、私がいなかったら…葵さん、別れることなかったかもしれない…。」
「ユリならそう言うと思ってた。でもねユリ。私はユリに色々気づかされたの。時間の無駄だってことも、ユリが教えてくれた。ユリは私のことをリセットしてくれたの。だからそんな顔しないで。笑ってユリ。ありがとう、感謝してる。」

 葵は清々しい笑顔を百合に向けた。葵の優しさでさらに涙腺が緩む百合。

「葵さん…。」
「もー泣かないの!」

 百合は葵に抱き締められる。葵の優しさ、葵の心。とても暖かかった。百合を抱き締めながら葵は言う。

「そうそう、聞いてよ、舞!」
「今度は何よー??」
「別れ話になった時ね、彼『別れないでくれ』ってすがり付いてきたの!こんな女々しい人だったなんてって思ったら、別れてよかったってほんと思った!」
「ねー葵ー?」
「何?」
「合コンとか、行っちゃう?」
「あーそれいい!」
「じゃあ、香に聞いてみるね!」

 葵の腕の中、百合が声を出す。

「あ!」
「なに?ユリは合コン行っちゃだめだよ?」
「違います。すみません、また2人にお願いが…。」