その他に、客には出せないイカゲソと鱈の尾の方をフライにしたものもあり、それには潰した茹で卵をマヨネーズで和えたものがソースとしてかけられていた。
「いただきます!」
大吉は手を合わせると、立ったままで食べ始める。
その美味しさたるや、頬っぺたが落ちそうだ。
(ささっと余りもので作った賄い飯とは思えないほどうまいなぁ。これがあるから浪漫亭で働くのは苦にならない。左門さんの洗濯や掃除は嫌だけど)
たちまち完食して幸せ一杯にため息をつけば、五人いるコック達が皆笑った。
「大吉、卵ならまだまだあるぞ。食うか? こいつが発注量を間違えたもんだから、腐るほど届いちまったんだ」
中堅のコックがそう言ってくれたので、大吉は遠慮なく食べたいと申し出た。
すると空になったばかりの皿に、目玉焼きに卵焼き、フライドエッグと、卵だけで作れる簡単料理が次々とのせられた。
卵の現在価格は一個、七銭ほどである。
決して安くはないというのに、こんなに食べさせてもらえるとは、なんという贅沢なのか。
発注量を間違えて叱られたという若いコックに感謝して、大吉は追加された卵料理も瞬く間に食べ切った。
「ああ、うまかった」と腹をさする大吉に、柘植が穏やかに微笑んで問う。
「卵ばかりで、飽きませんでしたか?」
「卵は色んな料理に化けるから、ちっとも飽きません。七変化の食材ですね」
今食べただけでも、五種類に化けている。
アイスクリームやマヨネーズの材料でもあるし、揚げ物の衣にも使われている。
「七変化、その通りですね」と柘植が同意したら、焼き立てのパンをオーブンから出している若いコックが口を挟んだ。
「七変化と言えば、例の女怪盗が昨夜また出たらしいです。朝刊に載ってました」
昨夜のことは知らないが、女怪盗については大吉も興味を持っている。
「いただきます!」
大吉は手を合わせると、立ったままで食べ始める。
その美味しさたるや、頬っぺたが落ちそうだ。
(ささっと余りもので作った賄い飯とは思えないほどうまいなぁ。これがあるから浪漫亭で働くのは苦にならない。左門さんの洗濯や掃除は嫌だけど)
たちまち完食して幸せ一杯にため息をつけば、五人いるコック達が皆笑った。
「大吉、卵ならまだまだあるぞ。食うか? こいつが発注量を間違えたもんだから、腐るほど届いちまったんだ」
中堅のコックがそう言ってくれたので、大吉は遠慮なく食べたいと申し出た。
すると空になったばかりの皿に、目玉焼きに卵焼き、フライドエッグと、卵だけで作れる簡単料理が次々とのせられた。
卵の現在価格は一個、七銭ほどである。
決して安くはないというのに、こんなに食べさせてもらえるとは、なんという贅沢なのか。
発注量を間違えて叱られたという若いコックに感謝して、大吉は追加された卵料理も瞬く間に食べ切った。
「ああ、うまかった」と腹をさする大吉に、柘植が穏やかに微笑んで問う。
「卵ばかりで、飽きませんでしたか?」
「卵は色んな料理に化けるから、ちっとも飽きません。七変化の食材ですね」
今食べただけでも、五種類に化けている。
アイスクリームやマヨネーズの材料でもあるし、揚げ物の衣にも使われている。
「七変化、その通りですね」と柘植が同意したら、焼き立てのパンをオーブンから出している若いコックが口を挟んだ。
「七変化と言えば、例の女怪盗が昨夜また出たらしいです。朝刊に載ってました」
昨夜のことは知らないが、女怪盗については大吉も興味を持っている。