しかしながら大吉は、何年も前から手作りしてマヨネーズを食べていた。
彼は小柄ながら大食漢である。
食への興味は人一倍で、特に洋食には憧れのような気持ちを持って育ってきた。
とはいえ実家は田舎の漁師なので、食卓に並ぶのは刺身や魚の煮付け、塩焼きばかりで、大吉は不満であった。
洋食が食べたいと駄々をこねれば、忙しい母親に『自分で拵えなさい』と言われ、作ってはもらえなかったのだ。
せっかく函館に来ても、下宿先は祖父の知り合いの練りもの店で、夕食のおかずはおでんや煮物、売れ残りのかまぼこがそのまま出されることもしばしばである。
それで大吉は、こういうものが食べたいと、女将の負担にならないように、かまぼこを使った簡単な料理を提案した。
それが店の商品となり、飛ぶように売れているらしい。
揚げかまぼこの親しみやすい洋食というのが、年齢層問わず受け入れられた要因であるようだ。
褒められた大吉が照れていると、客の会計を済ませた坂田屋の店主も、笑顔で寄ってきた。
中肉中背で頭に手ぬぐいを巻き、たくし上げた着物の下にはズボン。腰に黄ばんだ前掛けを締めた店主を、大吉は“大将”と呼んでいる。
大将も揚げかまぼこサンドの売れ行きに気を良くし、「大したもんだ。商業学校に通うほどだからな。大吉は頭がいい」と褒めてくれた。
その後に、「他に新商品の案はねぇか?」と問いかけてくる。
「あります!」と大吉は張り切る。
あれもこれも食べたいと自ら言うのは図々しい気がしていたが、大将の方から案を求めてきたのだ。遠慮する必要はないだろう。
「チーズを練り込んだかまぼこはどうですか?」と自信満々に言って、大吉は下唇を舐めた。
函館の隣町には大きな修道院があり、そこでチーズを生産しているという。
話には聞いても、売られているのを見たことはなく、一度食べてみたいと思っていた。
彼は小柄ながら大食漢である。
食への興味は人一倍で、特に洋食には憧れのような気持ちを持って育ってきた。
とはいえ実家は田舎の漁師なので、食卓に並ぶのは刺身や魚の煮付け、塩焼きばかりで、大吉は不満であった。
洋食が食べたいと駄々をこねれば、忙しい母親に『自分で拵えなさい』と言われ、作ってはもらえなかったのだ。
せっかく函館に来ても、下宿先は祖父の知り合いの練りもの店で、夕食のおかずはおでんや煮物、売れ残りのかまぼこがそのまま出されることもしばしばである。
それで大吉は、こういうものが食べたいと、女将の負担にならないように、かまぼこを使った簡単な料理を提案した。
それが店の商品となり、飛ぶように売れているらしい。
揚げかまぼこの親しみやすい洋食というのが、年齢層問わず受け入れられた要因であるようだ。
褒められた大吉が照れていると、客の会計を済ませた坂田屋の店主も、笑顔で寄ってきた。
中肉中背で頭に手ぬぐいを巻き、たくし上げた着物の下にはズボン。腰に黄ばんだ前掛けを締めた店主を、大吉は“大将”と呼んでいる。
大将も揚げかまぼこサンドの売れ行きに気を良くし、「大したもんだ。商業学校に通うほどだからな。大吉は頭がいい」と褒めてくれた。
その後に、「他に新商品の案はねぇか?」と問いかけてくる。
「あります!」と大吉は張り切る。
あれもこれも食べたいと自ら言うのは図々しい気がしていたが、大将の方から案を求めてきたのだ。遠慮する必要はないだろう。
「チーズを練り込んだかまぼこはどうですか?」と自信満々に言って、大吉は下唇を舐めた。
函館の隣町には大きな修道院があり、そこでチーズを生産しているという。
話には聞いても、売られているのを見たことはなく、一度食べてみたいと思っていた。