そのためには無事に商業高校を卒業し、レストラン通いができるほどの給与をもらえる大きな商社に勤めなければと、大吉は至極真面目に考えていた。
女性客の食事の邪魔をしないよう、離れたテーブルから音を立てないように卓布とメニュー表を取り替えていく。
四人掛けとふたり掛け、二十五卓を整え終え、あとは女性客が座っているテーブルだけである。
彼女はライスカレーを三分の二ほど食べたところで、もうしばらく時間が必要なようだ。
すぐ後ろの窓際のテーブルにいる大吉は、一旦下がろうと思い、ワゴンに手をかけた。
すると突然、しくしくと泣く声が聞こえ、驚いて見れば、両手で顔を覆った女性客が肩を震わせている。
ホール係の従業員は別室で休憩中であり、穂積だけが最新式の電動レジスターの前で、昼の部の売上金を勘定している最中である。
穂積の位置から女性客は見えておらず、声をかけてあげられるのは大吉しかいないようだ。
「あの、どうしたんですか?」
彼女の横に立ち、戸惑いながら尋ねれば、なんでもないというように首を横に振られた。
けれども、その直後に彼女は「うっ」と呻き、堪え切れないといった様子で泣き声を大きくした。
「大丈夫ですか!?」
女性の泣き声と慌てる大吉の声を聞きつけ、穂積と、厨房からコック長の森山までが駆けつける。
「お客様、なにか失礼がございましたでしょうか?」
柔らかな声で問いかけた穂積に対し、森山は、「なにをやった」と怒り顔で大吉を詰問する。
「ぼ、僕はなにもしていません」
あらぬ疑いをかけられた大吉は急いで否定し、しゃくり上げる女性客も「違うんです、その方は関係ありません」と庇ってくれた。
水を飲ませて背中をさすり、落ち着かせてから事情を聞くと、女性客はハンカチーフで目元を拭いつつ、か細い声で話しだす。
女性客の食事の邪魔をしないよう、離れたテーブルから音を立てないように卓布とメニュー表を取り替えていく。
四人掛けとふたり掛け、二十五卓を整え終え、あとは女性客が座っているテーブルだけである。
彼女はライスカレーを三分の二ほど食べたところで、もうしばらく時間が必要なようだ。
すぐ後ろの窓際のテーブルにいる大吉は、一旦下がろうと思い、ワゴンに手をかけた。
すると突然、しくしくと泣く声が聞こえ、驚いて見れば、両手で顔を覆った女性客が肩を震わせている。
ホール係の従業員は別室で休憩中であり、穂積だけが最新式の電動レジスターの前で、昼の部の売上金を勘定している最中である。
穂積の位置から女性客は見えておらず、声をかけてあげられるのは大吉しかいないようだ。
「あの、どうしたんですか?」
彼女の横に立ち、戸惑いながら尋ねれば、なんでもないというように首を横に振られた。
けれども、その直後に彼女は「うっ」と呻き、堪え切れないといった様子で泣き声を大きくした。
「大丈夫ですか!?」
女性の泣き声と慌てる大吉の声を聞きつけ、穂積と、厨房からコック長の森山までが駆けつける。
「お客様、なにか失礼がございましたでしょうか?」
柔らかな声で問いかけた穂積に対し、森山は、「なにをやった」と怒り顔で大吉を詰問する。
「ぼ、僕はなにもしていません」
あらぬ疑いをかけられた大吉は急いで否定し、しゃくり上げる女性客も「違うんです、その方は関係ありません」と庇ってくれた。
水を飲ませて背中をさすり、落ち着かせてから事情を聞くと、女性客はハンカチーフで目元を拭いつつ、か細い声で話しだす。