大吉は歓声を上げ、入店時に『騒がしくなりそう』だと予想されたことを的中させてしまった。
喜び勇んで座った席は、左門の斜向かいだ。
給仕の男は終始にこやかな笑みを絶やさず、ふたりの前に銀のナイフとフォーク、スプーン、三角に折った白い布を並べ、料理の皿を置いた。
香り高い紅茶は、別皿のレモンと角砂糖、ミルクを添えて出される。
全てを美しく配置し終えると、「ごゆっくりお召し上がりください」と一礼し、ワゴンを押して静かに退出した。
大吉は嬉しそうに目を細め、「綺麗だなぁ」と目の前の皿をうっとりと眺める。
均一な薄黄色に焼き上げられた卵は一切焦げ目がなく、笹の葉形に成形され、中央にかけられた赤いトマトソースが銀縁の白い皿の上に扇状に広がっている。
付け合わせには、見たことのない縮れたような葉の野菜が控え目に添えられており、大吉は不思議そうな顔をした。
すると、左門が教えてくれる。
「パセリというセリ科の野菜だ。オランダゼリとも言う」
食べて良いと言われる前に、大吉は「いただきます」と手を合わせ、スプーンを持つ。
胸を高鳴らせて端を崩せば、中からは橙色に染まった艶やかなライスが現れる。
混ぜ込まれた具材は、玉葱と鶏肉のようだ。
ゴクリと唾を飲んだ大吉は、そっとスプーンですくって口元へ。
ふんわりと焼き上げてある卵とライスを、トマトソースと共に味わえば、円らな瞳が驚きと感動に輝いた。
(ライスはバターの風味がしてコクがある。トマトソースの酸味と塩味は、卵の甘みを引き立てるのだな。そしてこの焼き具合は一体どうなっているんだ。完全に火が通っているのに卵がふわふわだ)
ひと口目をよく味わったその後は、空腹も手伝って忙しなくスプーンを動かし、たちまち平らげる。
そして、トマトソースの残り香のする呼気を、空の皿に向けて吐き出した。
喜び勇んで座った席は、左門の斜向かいだ。
給仕の男は終始にこやかな笑みを絶やさず、ふたりの前に銀のナイフとフォーク、スプーン、三角に折った白い布を並べ、料理の皿を置いた。
香り高い紅茶は、別皿のレモンと角砂糖、ミルクを添えて出される。
全てを美しく配置し終えると、「ごゆっくりお召し上がりください」と一礼し、ワゴンを押して静かに退出した。
大吉は嬉しそうに目を細め、「綺麗だなぁ」と目の前の皿をうっとりと眺める。
均一な薄黄色に焼き上げられた卵は一切焦げ目がなく、笹の葉形に成形され、中央にかけられた赤いトマトソースが銀縁の白い皿の上に扇状に広がっている。
付け合わせには、見たことのない縮れたような葉の野菜が控え目に添えられており、大吉は不思議そうな顔をした。
すると、左門が教えてくれる。
「パセリというセリ科の野菜だ。オランダゼリとも言う」
食べて良いと言われる前に、大吉は「いただきます」と手を合わせ、スプーンを持つ。
胸を高鳴らせて端を崩せば、中からは橙色に染まった艶やかなライスが現れる。
混ぜ込まれた具材は、玉葱と鶏肉のようだ。
ゴクリと唾を飲んだ大吉は、そっとスプーンですくって口元へ。
ふんわりと焼き上げてある卵とライスを、トマトソースと共に味わえば、円らな瞳が驚きと感動に輝いた。
(ライスはバターの風味がしてコクがある。トマトソースの酸味と塩味は、卵の甘みを引き立てるのだな。そしてこの焼き具合は一体どうなっているんだ。完全に火が通っているのに卵がふわふわだ)
ひと口目をよく味わったその後は、空腹も手伝って忙しなくスプーンを動かし、たちまち平らげる。
そして、トマトソースの残り香のする呼気を、空の皿に向けて吐き出した。