ぼんやり考え込んでいたせいで、じゃがいもの切り方を間違えてしまった。
櫛形ではなく、微塵切りのじゃがいもが、まな板の上に山盛りになっている。
中堅のコックが大吉の側に寄り、呆れ顔をする。
「これじゃ他の料理にも使えない。もったいないことをするな」
「すみません……」
食材を無駄にしたと叱られて、大吉は肩を落とす。
これまでは、『まぁまぁ』と庇ってくれた柘植もいない。
それも寂しくて、俯いてしまう。
すると意外にも、森山が助け船を出してくれた。
「無駄にはしねぇ。それは蒸してすり潰せ。牛乳、クリーム、コンソメスープを加えてポタージュにすればいい」
中堅のコックに、じゃがいものポタージュ作りを命じた森山は、大吉の目の前に皿をドンと置いた。
大盛りライスカレーに、ポークカツレツがのっている。
メニューにはないその皿は、大吉のために作った賄い飯であるようだ。
豪華な賄い飯に目を丸くする大吉に、鼻を鳴らした森山がぶっきら棒に言う。
「これで少しはマシになるだろ。元気がなければ、お前はただの役立たずだ。そっちの端で座って食え」
「森山さん……ありがとうございます」
コック長の不器用な優しさに、大吉は励まされた。
失敗した上に心配されて、こんなことではいけないと、無理やり笑顔を作る。
「いただきます!」
厨房の隅に置いてある、木製の踏み台に腰掛けた大吉は、賄い飯を頬張る。
ポークカツレツは、かつては珍しい料理であったようだが、今は大衆食堂でも出されている。
誰が名付けたのか知らないが、“トンカツ”という名で広まり、庶民の味となりつつあった。
浪漫亭のポークカツレツは、それらのトンカツとは一線を画したものである。
特上の素材で、上品かつ丁寧に作られており、大衆食堂の三倍もの値段がつけられているのも納得の味だ。
櫛形ではなく、微塵切りのじゃがいもが、まな板の上に山盛りになっている。
中堅のコックが大吉の側に寄り、呆れ顔をする。
「これじゃ他の料理にも使えない。もったいないことをするな」
「すみません……」
食材を無駄にしたと叱られて、大吉は肩を落とす。
これまでは、『まぁまぁ』と庇ってくれた柘植もいない。
それも寂しくて、俯いてしまう。
すると意外にも、森山が助け船を出してくれた。
「無駄にはしねぇ。それは蒸してすり潰せ。牛乳、クリーム、コンソメスープを加えてポタージュにすればいい」
中堅のコックに、じゃがいものポタージュ作りを命じた森山は、大吉の目の前に皿をドンと置いた。
大盛りライスカレーに、ポークカツレツがのっている。
メニューにはないその皿は、大吉のために作った賄い飯であるようだ。
豪華な賄い飯に目を丸くする大吉に、鼻を鳴らした森山がぶっきら棒に言う。
「これで少しはマシになるだろ。元気がなければ、お前はただの役立たずだ。そっちの端で座って食え」
「森山さん……ありがとうございます」
コック長の不器用な優しさに、大吉は励まされた。
失敗した上に心配されて、こんなことではいけないと、無理やり笑顔を作る。
「いただきます!」
厨房の隅に置いてある、木製の踏み台に腰掛けた大吉は、賄い飯を頬張る。
ポークカツレツは、かつては珍しい料理であったようだが、今は大衆食堂でも出されている。
誰が名付けたのか知らないが、“トンカツ”という名で広まり、庶民の味となりつつあった。
浪漫亭のポークカツレツは、それらのトンカツとは一線を画したものである。
特上の素材で、上品かつ丁寧に作られており、大衆食堂の三倍もの値段がつけられているのも納得の味だ。