大吉は隅で、じゃがいもが入っていた木箱に腰を下ろした。
シチュー用の深皿に、ご飯をたっぷりと盛り、千切りキャベツとハンバーグステーキをのせる。
それに他のコックが作ったソースをかけた、賄い飯ならではのハンバーグ丼である。
見た目に繊細さを欠いているが、味は最高で、大吉は箸で掻き込むようにして頬張った。
(うまいなぁ。表面は適度に香ばしく、中はふっくらしている。旨味たっぷりの肉汁が溢れて、ご飯にしみた箇所も絶品だ。ソースも良い。森山さん達が作ると、なんでこんなに美味しくなるんだろう)
大盛りを誰より早く食べ終えたら、ひとりだけガスコンロの前で仕事をしていた森山が、出来上がった料理を器に入れた。
それは大きな油揚げがのった、きつねうどんである。
盆にのせたそれを無言で差し出すから、大吉は自分に作ってくれたのかと喜んだ。
「きつねうどんも普通に好きです。ありがとうございます。いただきます」
早速箸をつけようとしたら、「馬鹿野郎」と叱られた。
「お前は今食っただろ。それは絵描きのだ。持っていってやれ」
「ああ、弥勒さんのでしたか」
弥勒は浪漫亭に来て昼と夕の食事を取るよう左門に言われていたが、食べ慣れない洋食が続くのはつらいようで、食事時になってもやってこなくなった。
それでコック達は簡単な和食を作り、わざわざ弥勒の部屋まで届けてやっているのだ。
(あの不真面目なお調子者に、なぜみんな気を使ってやるんだ。浪漫亭の料理を食べたくないなんて、贅沢なことをいう奴は放っておけばいいのに)
不満に思う大吉だが、少しは心配もしている。
弥勒は最近、元気がなく、部屋にこもりきりだ。
絵を描くことにやっと本気になったのかと思いきや、そうでもない。
左門に叱られているところを、大吉は度々目にしていた。
シチュー用の深皿に、ご飯をたっぷりと盛り、千切りキャベツとハンバーグステーキをのせる。
それに他のコックが作ったソースをかけた、賄い飯ならではのハンバーグ丼である。
見た目に繊細さを欠いているが、味は最高で、大吉は箸で掻き込むようにして頬張った。
(うまいなぁ。表面は適度に香ばしく、中はふっくらしている。旨味たっぷりの肉汁が溢れて、ご飯にしみた箇所も絶品だ。ソースも良い。森山さん達が作ると、なんでこんなに美味しくなるんだろう)
大盛りを誰より早く食べ終えたら、ひとりだけガスコンロの前で仕事をしていた森山が、出来上がった料理を器に入れた。
それは大きな油揚げがのった、きつねうどんである。
盆にのせたそれを無言で差し出すから、大吉は自分に作ってくれたのかと喜んだ。
「きつねうどんも普通に好きです。ありがとうございます。いただきます」
早速箸をつけようとしたら、「馬鹿野郎」と叱られた。
「お前は今食っただろ。それは絵描きのだ。持っていってやれ」
「ああ、弥勒さんのでしたか」
弥勒は浪漫亭に来て昼と夕の食事を取るよう左門に言われていたが、食べ慣れない洋食が続くのはつらいようで、食事時になってもやってこなくなった。
それでコック達は簡単な和食を作り、わざわざ弥勒の部屋まで届けてやっているのだ。
(あの不真面目なお調子者に、なぜみんな気を使ってやるんだ。浪漫亭の料理を食べたくないなんて、贅沢なことをいう奴は放っておけばいいのに)
不満に思う大吉だが、少しは心配もしている。
弥勒は最近、元気がなく、部屋にこもりきりだ。
絵を描くことにやっと本気になったのかと思いきや、そうでもない。
左門に叱られているところを、大吉は度々目にしていた。