スコッチエッグにかけるブラウンソースは、銀のソース入れに用意されている。
パンの皿もあるので、いっぺんには運べず、大吉は何度も往復しなければならなかった。
特別室では清と文子が並んで座り、文子の向かいに左門、その隣が幸治である。
「お待たせしました」
愛想のない言い方で、最後の皿をドンと左門の前に置いても、注意されない。
左門は大吉に構うことなく、文子と談笑している。
話題は文子の縫製の仕事のようで、どんな服を縫っているのか、どこへ卸しているのかなどを尋ねていた。
洋食とは縁遠そうな生活環境にあるはずなのに、文子は上手にナイフとフォークを操って食べている。
その合間に、言葉少なに左門に返事をし、ふたりの会話を弾ませまいと必死な清が、口を挟んでいた。
焦りに加え、これから文子に告白するつもりでいるから、かなり緊張しているようだ。
スコッチエッグを食べ進めてはいるが、はたして味がわかっているのかは怪しい。
幸治だけは会話に参加せず、のん気に高級洋食に舌鼓を打っていた。
大吉は皆のグラスに水を注ぎ、左門には紅茶を用意した。
その後は面白くない顔をして、壁際に控えている。
(僕に気遣いなく、うまそうに食べるとは、ひどい友達を持ったな……)
左門は料理に手をつけず、優雅な所作で紅茶を飲むだけである。
他の三人の皿は、間もなく空になりそうだ。
すると左門が大吉に、デザートのカスタプリンを出すよう命じた。
「えっ、残ったら森山さんに頼んで、僕が食べるつもりだったのに……」
「残った場合、だな。彼らは私の客である。もちろん君より客が優先だ。早くしなさい」
もっともなので反論はできないが、大吉は大いに不満である。
「嫌がらせされてる気分だ」と呟きながら厨房へ行き、戻ってきてカスタプリンの皿を四人の前に出した。
「どうぞお召し上がりください」
パンの皿もあるので、いっぺんには運べず、大吉は何度も往復しなければならなかった。
特別室では清と文子が並んで座り、文子の向かいに左門、その隣が幸治である。
「お待たせしました」
愛想のない言い方で、最後の皿をドンと左門の前に置いても、注意されない。
左門は大吉に構うことなく、文子と談笑している。
話題は文子の縫製の仕事のようで、どんな服を縫っているのか、どこへ卸しているのかなどを尋ねていた。
洋食とは縁遠そうな生活環境にあるはずなのに、文子は上手にナイフとフォークを操って食べている。
その合間に、言葉少なに左門に返事をし、ふたりの会話を弾ませまいと必死な清が、口を挟んでいた。
焦りに加え、これから文子に告白するつもりでいるから、かなり緊張しているようだ。
スコッチエッグを食べ進めてはいるが、はたして味がわかっているのかは怪しい。
幸治だけは会話に参加せず、のん気に高級洋食に舌鼓を打っていた。
大吉は皆のグラスに水を注ぎ、左門には紅茶を用意した。
その後は面白くない顔をして、壁際に控えている。
(僕に気遣いなく、うまそうに食べるとは、ひどい友達を持ったな……)
左門は料理に手をつけず、優雅な所作で紅茶を飲むだけである。
他の三人の皿は、間もなく空になりそうだ。
すると左門が大吉に、デザートのカスタプリンを出すよう命じた。
「えっ、残ったら森山さんに頼んで、僕が食べるつもりだったのに……」
「残った場合、だな。彼らは私の客である。もちろん君より客が優先だ。早くしなさい」
もっともなので反論はできないが、大吉は大いに不満である。
「嫌がらせされてる気分だ」と呟きながら厨房へ行き、戻ってきてカスタプリンの皿を四人の前に出した。
「どうぞお召し上がりください」
