学校から帰った大吉は、清は想いを伝えられるだろうかと気にしつつ、厨房で働いている。
できることなら、ついて行きたかったが、そんな理由で仕事を休めない。
見届け人は幸治に任せることにして、忙しく皿を磨いていた。
時刻は午後六時になったところで、ホールにはディナー客が二十人ほど食事中だ。
オーブンから出されたパンを磨いた皿にのせ、森山が揚げたポークカツレツにキャベツの千切りを添えてホール係の従業員に渡す。
続いて「六番テーブルのデザートを用意しろ」と命じられ、冷蔵庫を開けた。
本日のデザートは、?牛乳卵砂糖寄温菓″と書いて、カスタプリンと呼ぶものだ。
茶碗蒸しの器のような陶器製の型を持ってきて、皿の上で逆さまにすると、薄黄色のカスタプリンが落ちてぷるぷると震える。
それに若いコックがカラメルソースをかけ、飾り切りした果物を盛り付けて完成する。
「どんな味がするんだろう。いっぺん食べてみたいなぁ」
大きな独り言を言ってチラリと森山を見たが、忙しくフライパンを操っている最中のため、大吉の声は届かなかった。
口を尖らせた大吉に、卵を割っている柘植がクスリと笑う。
「仕事終わりに頼んでごらんなさい。余ったものがあれば、食べさせてくれるでしょう」
「そうですね、そうします」
清のことは一旦頭の隅に寄せ、そのようなやり取りをしていたら、穂積が厨房に入ってきた。
「六番テーブルのカスタプリンです」
大吉が作業台の皿を指させば、穂積が銀のお盆にのせながら森山に言う。
「オーナーが大吉君を呼んでいるので借りていきますが、いいですか?」
「おう、いいぞ。つまみ食いの心配がなくて助かる」
「僕はつまみ食いなんかしませんよ。正々堂々、食べさせてくださいとお願いしてから食べます。森山さん、カスタプリンが余ったら僕にください」
「ったく、チビの大食いとはお前のことだな」
できることなら、ついて行きたかったが、そんな理由で仕事を休めない。
見届け人は幸治に任せることにして、忙しく皿を磨いていた。
時刻は午後六時になったところで、ホールにはディナー客が二十人ほど食事中だ。
オーブンから出されたパンを磨いた皿にのせ、森山が揚げたポークカツレツにキャベツの千切りを添えてホール係の従業員に渡す。
続いて「六番テーブルのデザートを用意しろ」と命じられ、冷蔵庫を開けた。
本日のデザートは、?牛乳卵砂糖寄温菓″と書いて、カスタプリンと呼ぶものだ。
茶碗蒸しの器のような陶器製の型を持ってきて、皿の上で逆さまにすると、薄黄色のカスタプリンが落ちてぷるぷると震える。
それに若いコックがカラメルソースをかけ、飾り切りした果物を盛り付けて完成する。
「どんな味がするんだろう。いっぺん食べてみたいなぁ」
大きな独り言を言ってチラリと森山を見たが、忙しくフライパンを操っている最中のため、大吉の声は届かなかった。
口を尖らせた大吉に、卵を割っている柘植がクスリと笑う。
「仕事終わりに頼んでごらんなさい。余ったものがあれば、食べさせてくれるでしょう」
「そうですね、そうします」
清のことは一旦頭の隅に寄せ、そのようなやり取りをしていたら、穂積が厨房に入ってきた。
「六番テーブルのカスタプリンです」
大吉が作業台の皿を指させば、穂積が銀のお盆にのせながら森山に言う。
「オーナーが大吉君を呼んでいるので借りていきますが、いいですか?」
「おう、いいぞ。つまみ食いの心配がなくて助かる」
「僕はつまみ食いなんかしませんよ。正々堂々、食べさせてくださいとお願いしてから食べます。森山さん、カスタプリンが余ったら僕にください」
「ったく、チビの大食いとはお前のことだな」
