他の女給達もにわかには信じられない様子で、「本気なの?」と牡丹に確認している。
今日こうして大吉に構うのは、左門からの高額チップが狙いである。
日を改めて大吉と会うことに、なんの得があるのかと言いたげだ。
すると牡丹が蠱惑的に笑い、大吉の丸い輪郭を指先でなぞる。
「可愛いじゃない。好きになってしまいそう」
「牡丹さん……僕はずっと前から、すでに大好きです!」
歓喜と興奮で大吉は鼻血を出してしまい、牡丹の膝枕で手当てされる。
(幸せで死にそうになることって、あるんだな……)
牡丹の太腿の柔らかさに興奮を冷ますことができずにいると、「よかろう」という太い声が聞こえた。
悩んでいた播磨が、左門の要求を飲むことにしたようである。
「賢明なご判断だと思います」
左門がニヤリとして握手を求めれば、播磨はフンと鼻を鳴らして、その手を無視する。
「女怪盗に目星がついているのか?」
「いいえ、これから調査します」
「君は頭が切れるようだが、警察が捕らえられぬ者の正体を、はたして見破れるのか。お手並み拝見といこう。私は短気な方でな、あまり待たせないでくれよ」
左門の瞳が挑戦的に光り、美麗な口の端が嬉しげに吊り上がる。
今日は大吉のみならず、左門も大きな成果を得られたようであった。
カフェー初体験の日から六日が経った水曜日、今日は浪漫亭の定休日である。
学校から帰ったばかりの大吉は、着替える暇もなく左門に呼び出され、こき使われている。
薪を割って風呂焚きをさせられ、その後は応接間の掃除だ。
応接間は十四畳ほどで、中央にはペルシャ絨毯が敷かれ、豪華なテーブルと長椅子二脚が置かれている。
格子天井からは三連の洒落た電灯が吊り下がり、壁際の大きな柱時計が存在感を放っていた。
家具の全ては舶来品だと聞いている。
今日こうして大吉に構うのは、左門からの高額チップが狙いである。
日を改めて大吉と会うことに、なんの得があるのかと言いたげだ。
すると牡丹が蠱惑的に笑い、大吉の丸い輪郭を指先でなぞる。
「可愛いじゃない。好きになってしまいそう」
「牡丹さん……僕はずっと前から、すでに大好きです!」
歓喜と興奮で大吉は鼻血を出してしまい、牡丹の膝枕で手当てされる。
(幸せで死にそうになることって、あるんだな……)
牡丹の太腿の柔らかさに興奮を冷ますことができずにいると、「よかろう」という太い声が聞こえた。
悩んでいた播磨が、左門の要求を飲むことにしたようである。
「賢明なご判断だと思います」
左門がニヤリとして握手を求めれば、播磨はフンと鼻を鳴らして、その手を無視する。
「女怪盗に目星がついているのか?」
「いいえ、これから調査します」
「君は頭が切れるようだが、警察が捕らえられぬ者の正体を、はたして見破れるのか。お手並み拝見といこう。私は短気な方でな、あまり待たせないでくれよ」
左門の瞳が挑戦的に光り、美麗な口の端が嬉しげに吊り上がる。
今日は大吉のみならず、左門も大きな成果を得られたようであった。
カフェー初体験の日から六日が経った水曜日、今日は浪漫亭の定休日である。
学校から帰ったばかりの大吉は、着替える暇もなく左門に呼び出され、こき使われている。
薪を割って風呂焚きをさせられ、その後は応接間の掃除だ。
応接間は十四畳ほどで、中央にはペルシャ絨毯が敷かれ、豪華なテーブルと長椅子二脚が置かれている。
格子天井からは三連の洒落た電灯が吊り下がり、壁際の大きな柱時計が存在感を放っていた。
家具の全ては舶来品だと聞いている。
