宝物を取りに行ってくれる話ではなかったかと大吉は戸惑い、裏切られた気分になる。
けれども、美形の青年はすぐに姿を現す。
それはなんと、隣家の屋根の上であった。
大吉は呆気にとられるばかりだ。
(屋根から僕の部屋の窓に飛び込むつもりなのか? いや、まさかな。どう見ても届かないだろう)
隣家の屋根から飛べば、二階と一階の間の壁に激突するか、もしくは壊れたリヤカーの上に落下して大怪我をしそうである。
庭の片隅で見守る大吉は一抹の不安を覚えつつ、「なにをする気ですか?」と屋根に向けて声を張り上げた。
聞こえてはいるだろうが、返事はない。
隣家の屋根はトタン葺きで、その上に重石代わりの丸太が組まれている。
青年はその丸太とトタンの隙間に、リヤカーから外した側板を差し込み、屋根の先端から四尺ほど庭側に突出させた。
そして傾斜のついた屋根のてっぺんまで下がったかと思ったら、今度は一気に駆け下りて側板を踏み、宙に身を躍らせた。
「あっ……!」
大惨事を予想した大吉は、反射的に両手で顔を覆う。
けれども青年から目を離せず、指の隙間からしっかり覗いていた。
彼の体は弧を描いて落ち、計ったように大吉の部屋の窓へ。
十字に交差させた両腕で顔を守りつつ、勢いのままにガラスの格子窓とその内側の障子窓を蹴破り、彼は見事に大吉の部屋に飛び込んだ。
「す、凄い……」
顔を覆っていた手を下ろし、大吉はあんぐりと口を開けて二階を見つめる。
破られた窓からは、煙がもくもくと溢れ出てきた。
窒息してしまうのではと、大吉が青年の身を案じたら、桐箱を片腕に抱えた彼が煤けた顔を覗かせた。
そして、窓枠に片手でぶら下がるようにして全身を外に出すと、リヤカーを避けて巧みに地面に飛び下りた。
その直後に大吉の部屋の窓から炎が噴き出し、両隣の窓ガラスも割れて、外壁から屋根へと家屋全体に火が回った。
まさに間一髪。
けれども、美形の青年はすぐに姿を現す。
それはなんと、隣家の屋根の上であった。
大吉は呆気にとられるばかりだ。
(屋根から僕の部屋の窓に飛び込むつもりなのか? いや、まさかな。どう見ても届かないだろう)
隣家の屋根から飛べば、二階と一階の間の壁に激突するか、もしくは壊れたリヤカーの上に落下して大怪我をしそうである。
庭の片隅で見守る大吉は一抹の不安を覚えつつ、「なにをする気ですか?」と屋根に向けて声を張り上げた。
聞こえてはいるだろうが、返事はない。
隣家の屋根はトタン葺きで、その上に重石代わりの丸太が組まれている。
青年はその丸太とトタンの隙間に、リヤカーから外した側板を差し込み、屋根の先端から四尺ほど庭側に突出させた。
そして傾斜のついた屋根のてっぺんまで下がったかと思ったら、今度は一気に駆け下りて側板を踏み、宙に身を躍らせた。
「あっ……!」
大惨事を予想した大吉は、反射的に両手で顔を覆う。
けれども青年から目を離せず、指の隙間からしっかり覗いていた。
彼の体は弧を描いて落ち、計ったように大吉の部屋の窓へ。
十字に交差させた両腕で顔を守りつつ、勢いのままにガラスの格子窓とその内側の障子窓を蹴破り、彼は見事に大吉の部屋に飛び込んだ。
「す、凄い……」
顔を覆っていた手を下ろし、大吉はあんぐりと口を開けて二階を見つめる。
破られた窓からは、煙がもくもくと溢れ出てきた。
窒息してしまうのではと、大吉が青年の身を案じたら、桐箱を片腕に抱えた彼が煤けた顔を覗かせた。
そして、窓枠に片手でぶら下がるようにして全身を外に出すと、リヤカーを避けて巧みに地面に飛び下りた。
その直後に大吉の部屋の窓から炎が噴き出し、両隣の窓ガラスも割れて、外壁から屋根へと家屋全体に火が回った。
まさに間一髪。