「おむすびも、餅はふたつでよかったか?」
「はい。ありがとうございます」

 一心さんがお汁粉をお盆に乗せたとき、迷うことなくお椀を四つ用意していて、私はそれが無性にうれしかったんだ。

「じゃあ、いただきます」

 上品な甘さかなと予想していたお汁粉はしっかり甘くて、動いて疲れた身体に沁み渡るようだった。お餅も、柔らかすぎずちょうどいい食べごたえ。
 土手や階段に散り散りになったみんなを見渡してみると、甘いものとお茶でひと息ついたあとのゆったりとした時間が流れていた。おしゃべりも緩やかになって、みんながこの空間と時間を味わっているみたい。

 甘いものを食べたあとって、ほっとして、心と身体が緩んで、陽射しや風が心地よく感じるのってどうしてだろう。

 第一回こころ食堂主催芋煮会。大成功で終わった今日の会。その秋の風景もみんなの笑顔も、忘れないようにしようと思って私は深く息を吸い込んだ。

 これから図書館で芋煮会のレポートを書く、という子どもたちを集団で帰して、大人たちが片付けを手伝ってくれているとき、見たことのない女性が手を振りながらこちらに近付いてきた。

 誰の知り合いだろう? と思ったとき、「四葉(よつば)ちゃん!」と手を振り返しながら、夏川先生が女性のもとに駆けていった。
 夏川先生と同じ二十代後半くらいに見えるし、お友達なのだろうか。同僚の教師だったら『四葉先生』って呼ぶはずだよね。

 四葉、と呼ばれた女性は背が高くすらっとしていて、ボーイッシュなショートカットがよく似合っていた。袖をまくったラフなベージュのジャケットと、セットアップのパンツがモデルさんみたいにキマっている。儚げな夏川先生とは対照的で、きりっとした健康的な美人という感じ。

 しばらく談笑をしていたふたりだが、夏川先生が四葉さんを伴ってこちらに向かってくる。