遊ぼうって言われた時否定しかけたし、転院する気はあるハズなのに。

 俺は立ち上がり、屋上の柵の近くまで行った。

 本当なら俺は三月のあの日に姉と一緒に死んでるハズで。たとえそうじゃなかったとしても、自殺したあの日に死んでたハズなのに。親戚にも、通ってた学校の奴らにも散々恨まれて。死ねって毎日のように罵られた俺は、死んで当然の人間で。生きる価値もなくて体を売りさばけば、零円で買い取られるような奴のに。それなのに、あいつらは処刑台に立たされてた俺を、暴動を起こして無理矢理助けた。頼んでもないのに。……頼んでないのに、死ななかったあの日、俺はほっとしてしまった。
 生かされて安心した。そんなこと絶対に思っちゃいけないのに。最愛の人を殺した人間に、そんなことを思う権利なんてないのに。たとえ俺の本位じゃなかったとしても、姉が俺を庇ったのは事実で、あの日、俺が隣にいなければ、姉は生きてたハズなんだ。そんな奴が、助けて欲しいなんて思うのはおこがましいにもほどがある。それなのに俺は……。

 柵を掴み、下を見る。

 ――今からでも死んでしまえばいいのではないか。死ぬ勇気もないくせに、そんなことを思う。
 死ぬ勇気があったら、先生が言ったフランスで一番高い病院ではなく、世界で一番高い病院に入院するに決まっている。その方があいつらが治療費を払えなくなる可能性が高いのだから。