「あづ、服脱げ」
 あづの顔を見ながら言う。
「へ?」
「パーカー濡れてるのに着たまんまじゃ寒いだろ。風も悪化するし。俺の貸してやるから。今度来た時返せばいいんだし、気にすんなよ。わかったら早く脱げ」
 風邪が悪化するなんて口実だ。
 頭以外にも痣があるのかと思ったから、それを確かめたかった。
「いっ、いいよ。別に寒くねぇし」
 あづは見栄を張るように言う。
 今ので確信した。こいつは、本当に頭以外にも痣がある。
「そうか? ならいいけど」
 でも、これ以上詮索したらダメだ。
 言いたくないなら、無理矢理聞き出さない方がいい。逆上しちゃう可能性もあるし、それが懸命だ。
 それにしても、なんで痣があるんだ?
 穂稀先生があづに虐待をしてるのか? いやそれはない。証拠もないし、何より俺はあの人を疑いたくない。あの人なわけがない。
「なえ」
 病衣の裾を引っ張ってあづは言う。
「ん?」
「連絡先教えろよ。それでいきたいとことか、いつ行くかとか話し合おうぜ」
 急に話題を切り替えられた。よっぽど話したくないんだな……。やっぱり聞かない方がよさそうだ。
「俺携帯持ってねぇよ。だから三人で決めろよ」
「今時携帯持ってない奴とかいるんだな」
 目を丸くして潤は言う。
「え、マジで? なんで持ってねぇの?」
 俺に顔を近づけて、あづは首を傾げる。