果たしてそれは、俺が一番聞きたくない言葉だった。
「思ってない。帰れ」
 掠れた自信なさげな声が漏れた。
「奈々絵」
「帰れ!!」
 大声で言う。
 俺はもう何も聞きたくないと言うかのように、布団を頭にかぶった。
「また来る」
 布団の上から俺の頭を撫でて、あづは言った。
 何がまた来るだ。くそが!!
 親戚も同級生も、みんな死ねって言ったんだ。俺が息をしてるのは許されない。
 本当は怖かった。
 飛び降りようとした時、足が震えた。涙が流れそうになった。
 けれど、それがなんだ?
 怖いことは死なない理由にはならない。
 死刑を言い渡された人間が、そんな感情一つで罰が軽くならないのと同じように。
 死ねって言われたら、死ななきゃいけない。
 だって、そうしないと毎日死ねって言われるんだから。そんなの地獄でしかない。それなのに、何で否定しなかった。
 嘘でも否定しろよ!! でないと、あいつは俺がまた死にに行ったら、また止めるのに。
 涙が頬を伝う。
 ……本当は死にたくない。
 俺は布団をぎゅっと握りしめた。