祐吾がオフィスを出たところ、背後から名前を呼ばれた。
振り向くと、久しぶりに見る顔がある。

「智也か。珍しいな、こんなところで。」

智也は祐吾の隣に来ると、一緒に歩き出した。

祐吾と智也は幼稚園から高校までの私立一貫校で共に学んだ仲だ。
連絡を取り合ったりすることはあまりないが、それでもずっと仲がいい。

「今日は早く上がれたんだ。たまには飲みに行こうぜ。」

「いいけど、お前、酒は飲めないんだろう?」

智也は総合病院に勤務する医師だ。
いつ何時呼び出しの電話がかかってくるかわからない。

まあまあいいから、と智也は強引に行きつけの居酒屋に祐吾を連れて行った。