奈々は一応大学を卒業している。
就活に失敗して、慌てて職を探し行き着いた先が派遣社員だっただけのこと。
そのことを恥じたことはない。
その後、転職しようと思えばいくらでもできたはずだし、実際に考えたこともあった。

でもそれをしなかったのは、ここでの仕事が好きになっていたし、人間関係も悪くなかったから。
辞めるという、これという決め手がなかったのだ。

だけど最近切に思っていた。
自分と祐吾は釣り合わないんじゃないかと。

いい大学を出てどんどん昇進していく祐吾。
給与額は知らないが、奈々とは比べ物にならないくらい貰っているのだろう。
カード払いは当たり前だし、そもそもあのタワーマンションに住んでいるくらいだ。

かたや奈々はほとんど昇給なしの派遣社員。
自分一人で細々と暮らしていくならなんとかなるが、将来を考えると不安でしかたがない。

もしかしたら、今が転職の時なのでは?と考えるようになっていた。