「倉瀬さんと二人でニンニク臭なら、罪悪感薄いですよね。」

「お前なぁ。」

「でも一応対策は持ってきました。」

奈々は鞄から携帯用消臭スプレーと、息スッキリタブレットを取り出す。
気休め程度の消臭剤を身にまとい、タブレットを何個か口に放り込んだ。
これで薄れたかどうかは、全くもってわからない。

「二人でニンニク臭ってことは、今日は俺の家に泊まりだな。」

「…えっ?…えええっっっ!」

思い付いたように倉瀬が言うと、奈々は仰け反って驚いた。

「どうせ何も予定がない土日だしな。当然奈々もだろ?」

「そう、ですけど。でも…。」

渋る奈々に、そういえば実家暮らしだったなと思い出す。
母親は亡くなっているので、父親と弟と三人で暮らしていると前に聞いた。

「泊まりはマズいか?」

一応、家族に気を遣って訊ねてみたが、

「いえ、大丈夫…。いや、でも、着替えないし。」

「うちの超高性能なドラム式乾燥機付き洗濯機がある。」

「えっ、ええっ…。歯ブラシとか…。」

「コンビニで買ってやるよ。」

「ニンニク臭いし…。」

「だから泊まれって言ってんだろーが。お前それで電車乗って帰るつもりかよ。」

「帰るつもりでした…。」

なかなか首を縦に振らない奈々に痺れを切らし、家族との制約も無さそうだと判断した倉瀬は強引に奈々を自宅まで引きずり込んだ。

途中、コンビニで歯ブラシを買うのも忘れなかった。