二人は派手なことを好まなかったので、親族のみの小さな結婚式を挙げることにした。
祐吾の父親が世間体がと少し渋ったが、会社関係者には後日きちんと挨拶に回るということで納得してもらった。


新婦控室で綺麗に着飾ってもらう。
奈々は鏡で自分の姿を見て、胸が熱くなった。
純白のウェディングドレスがとても華やかで上品だ。
一生に一度の晴れ姿、母にも見せたかったなと少ししんみりしてしまう。

真っ先に控え室に入ってきた父が、奈々を見て目を細める。

「幸せになりなさい。」

穏やかで落ち着いた、それでいて重みのある言葉に、奈々は化粧が落ちないように頷くのがやっとだ。

幸せが胸いっぱいに広がって、言葉では言い表すことができないくらいに嬉しくて嬉しくて、感無量になった。