奈々はもう限界だった。

言うべきか、言わぬべきか。
言わないでおこうと思ったのに、結局こんなに心配をかけてしまっている。
祐吾を困らせてしまっている。

何より、もう自分が平静を装えないでいた。

「わたし…」

少し顔を上げて声を出すが、震えてしまう。
口を開いた奈々を、祐吾は手を握ったままじっと見守った。

「赤ちゃん…できて…でも…り、流産しちゃって…。」

つらくて悲しくて、もうそれ以上言葉が出てこず、代わりにどんどん涙が頬を濡らしていく。
祐吾を見ることすらままならず、奈々は再び俯いた。

赤ちゃん?
流産?

祐吾の頭にいくつもの疑問符がわき上がる。

「なぜすぐに俺に言わないんだ。」

「…ごめん…なさい。」

奈々は震えながらひたすら「ごめんなさい」を繰り返した。

黙っていたことにごめんなさい。
流れてしまった赤ちゃんにごめんなさい。
不甲斐ない自分にごめんなさい。

とめどなく溢れる涙を止めるすべは、見つからなかった。