祐吾は仕事を放り出して、奈々を無理矢理マンションへ連れ帰った。

ずっと青白く震えている奈々を、とりあえずソファへ座らせる。
何か飲むかと聞いても、静かに首を振るだけだ。

「どうしたんだ?そんなに体調が悪いのか?」

聞いても答えない奈々の手を取って、改めて聞く。
奈々は俯いて、祐吾と目を合わそうとしない。

「奈々、何を隠している?」

奈々はその言葉にビクッと反応したかと思うと、じわりじわりと涙が溢れ、それはやがて瞳いっぱいになった。
だが、唇をぎゅっと噛みしめ何も話そうとはしない。

祐吾は困って、奈々の両手を握り直した。
そしてゆっくりと、懇願するように訴えかける。

「奈々の体が大事だから、ちゃんと言ってくれ。じゃないと心配で仕方ない。」

奈々が何か大きな病気を患っているのではないか、そんな疑いが祐吾の頭をちらつかせた。