翌日。喫茶室・ジョリン。友江は加波子に大きく問う。
「あんた、今日お肌つやつや。光ってる。眩しい。おかしい。何よ、何したのよ、昨日何かあったの??」
加波子は至って冷静だった。
「昨日は絵美の結婚式だったじゃないですか。」
「違う、絶対何かあったわよ。何もない訳ない。あ…、そういえば確かあの人来てたわよね!…えーっと誰だっけ、ずっと前合コンで会って、あんたといい感じになった人…一緒にブーケ取った人…。」
「健さんですか?」
「そうそう!健さん!…あー彼と何かあったわね?教えなさい。命令よ、命令。」
加波子は躊躇することなく答える。
「プロポーズされました。断りましたけど。」
驚愕する友江。加波子は平然としている。それにさらに驚愕する。
「あんた何してるの??!!!」
「そう言われると思ってました。覚悟はできてました。けど先輩、声大き過ぎです。」
涼しい顔でコーヒーを飲む加波子。そんな加波子を見てさらにヒートアップする友江。
「だって、あんた!プロポーズって、断ったって、あんた何したのよ??」
「別に何もしてませんよ。ただ、彼の隣にいる自分が想像できなかっただけです。」
「そんなの関係ないでしょ?どうしてチャンスを逃すの!あんた自分がしたことわかってる?今からでも遅くない!電話しなさい、電話!」
興奮する友江に加波子は問う。
「じゃあ先輩。自分の理想の人が現れて、その人のことが好きじゃなくても結婚できますか?仮に、私がこの気持ちのまま健さんと結婚しても、幸せになれますか?」
珍しく友江が黙る。
「私は…好きな人と一緒にいられたら、それだけで幸せです。…結婚って、一体何なんですか…。」
それから友江は何も言わなかった。友江は加波子の言葉に考えさせられる。
焼き鳥屋の後の公園。自動販売機でコーヒーを買う亮。自分にはブラック、そして加波子にカフェオレを買おうとした。そのボタンを押す前。
「あ、私もブラックでいいの。」
亮は不思議に思いつつも、ブラックのボタンを押した。
ふたりは公園に入り、ベンチに座り肩を寄せ合う。加波子は左側。亮は右側。以前と何も変わらなかった。ただひとつ、変わったのは加波子のコーヒー。
「お前いつからブラック飲めるようになったんだ?」
ブラックのカンカンを見て微笑む加波子。
「亮がいなくなってから、いつの間にか飲むようになってたの。恋しかったのかな、亮のこと。もう慣れた。だからもう子供じゃないよ。」
澄ました顔でブラックのコーヒーを飲む加波子。それを見た亮は立ち上がる。
「どこ行くの?」
不安がる加波子に亮は返事をしない。亮は公園から出ていってしまった。すると自動販売機からカンカンが落ちる音。亮が戻ってきた。
「無理すんな。」
亮は加波子にカフェオレのカンカンを渡す。
「あ…。」
加波子はそれを素直に受け取った。久しぶりのカフェオレ。
「あまい…、おいしー…。」
笑みがこぼれる加波子。
「お前にブラックは似合わない。子供だからな。」
「もう子供じゃないってば!」
その日から、加波子は甘いコーヒーを飲むようになった。亮は甘いコーヒーと一緒に帰ってきた。
加波子は亮を見る。亮の髪に少し触れる。
「なんだよ。」
「髪、短いのも似合う。」
照れ隠しで亮は言う。
「お前は全然変わらないな。」
「うん。なるべく変わらないようにしてたの。髪型とか服装とか。コートだって買ってない。いつか亮が戻ってきた時、亮がいつでも私のこと気がつきやすいように。でも…顔が老けちゃったら、気づくものも気づかないよね。」
笑う加波子。手にはカフェオレのカンカン。
自分はどれほどの思いを加波子にさせていたのか、日に日にわかる亮。これから償っていこうと、亮は思った。必ず、と。でもその時の亮はそれを伝える言葉が見つからなかった。せめてもの想いを込めて。
「無理すんな。」
「あんた、今日お肌つやつや。光ってる。眩しい。おかしい。何よ、何したのよ、昨日何かあったの??」
加波子は至って冷静だった。
「昨日は絵美の結婚式だったじゃないですか。」
「違う、絶対何かあったわよ。何もない訳ない。あ…、そういえば確かあの人来てたわよね!…えーっと誰だっけ、ずっと前合コンで会って、あんたといい感じになった人…一緒にブーケ取った人…。」
「健さんですか?」
「そうそう!健さん!…あー彼と何かあったわね?教えなさい。命令よ、命令。」
加波子は躊躇することなく答える。
「プロポーズされました。断りましたけど。」
驚愕する友江。加波子は平然としている。それにさらに驚愕する。
「あんた何してるの??!!!」
「そう言われると思ってました。覚悟はできてました。けど先輩、声大き過ぎです。」
涼しい顔でコーヒーを飲む加波子。そんな加波子を見てさらにヒートアップする友江。
「だって、あんた!プロポーズって、断ったって、あんた何したのよ??」
「別に何もしてませんよ。ただ、彼の隣にいる自分が想像できなかっただけです。」
「そんなの関係ないでしょ?どうしてチャンスを逃すの!あんた自分がしたことわかってる?今からでも遅くない!電話しなさい、電話!」
興奮する友江に加波子は問う。
「じゃあ先輩。自分の理想の人が現れて、その人のことが好きじゃなくても結婚できますか?仮に、私がこの気持ちのまま健さんと結婚しても、幸せになれますか?」
珍しく友江が黙る。
「私は…好きな人と一緒にいられたら、それだけで幸せです。…結婚って、一体何なんですか…。」
それから友江は何も言わなかった。友江は加波子の言葉に考えさせられる。
焼き鳥屋の後の公園。自動販売機でコーヒーを買う亮。自分にはブラック、そして加波子にカフェオレを買おうとした。そのボタンを押す前。
「あ、私もブラックでいいの。」
亮は不思議に思いつつも、ブラックのボタンを押した。
ふたりは公園に入り、ベンチに座り肩を寄せ合う。加波子は左側。亮は右側。以前と何も変わらなかった。ただひとつ、変わったのは加波子のコーヒー。
「お前いつからブラック飲めるようになったんだ?」
ブラックのカンカンを見て微笑む加波子。
「亮がいなくなってから、いつの間にか飲むようになってたの。恋しかったのかな、亮のこと。もう慣れた。だからもう子供じゃないよ。」
澄ました顔でブラックのコーヒーを飲む加波子。それを見た亮は立ち上がる。
「どこ行くの?」
不安がる加波子に亮は返事をしない。亮は公園から出ていってしまった。すると自動販売機からカンカンが落ちる音。亮が戻ってきた。
「無理すんな。」
亮は加波子にカフェオレのカンカンを渡す。
「あ…。」
加波子はそれを素直に受け取った。久しぶりのカフェオレ。
「あまい…、おいしー…。」
笑みがこぼれる加波子。
「お前にブラックは似合わない。子供だからな。」
「もう子供じゃないってば!」
その日から、加波子は甘いコーヒーを飲むようになった。亮は甘いコーヒーと一緒に帰ってきた。
加波子は亮を見る。亮の髪に少し触れる。
「なんだよ。」
「髪、短いのも似合う。」
照れ隠しで亮は言う。
「お前は全然変わらないな。」
「うん。なるべく変わらないようにしてたの。髪型とか服装とか。コートだって買ってない。いつか亮が戻ってきた時、亮がいつでも私のこと気がつきやすいように。でも…顔が老けちゃったら、気づくものも気づかないよね。」
笑う加波子。手にはカフェオレのカンカン。
自分はどれほどの思いを加波子にさせていたのか、日に日にわかる亮。これから償っていこうと、亮は思った。必ず、と。でもその時の亮はそれを伝える言葉が見つからなかった。せめてもの想いを込めて。
「無理すんな。」