『ただいま』

そんな声とともに、彼が帰ってきた。

おかえり、と言っても彼はなかなかリビングに入って来ようとしなくて、様子を見に行った。
彼は何故だか複雑そうな顔をしていた。

『心咲、話があるんだ』

「ん。どうしたの?」

『しばらく家を空ける』

彼は覚悟を決めたように宣言した。
一方の私は、戸惑いを隠せずにいる。

「どうして?」

『見てみたいものがあるんだ。見つかるかどうかはわからないけど…でも、探しに行きたい。誰にも見つけてもらえない星を』

彼は天文学か何かの研究員だった。
私も研究所に連れてってもらったことがある。私にはよくわからないものばかりだったけれど、星の話をする彼はすごく楽しそうで、そんな彼が大好きだった。

「そっか」

じゃあ、しょうがない。
彼を止めることなんて、私には出来ない。

『心咲、ごめん。1年後には帰ってくるから』

彼は未知の星を求めて歩き出した。