「失礼しまーす」

 生徒会室のドアが開き、どやどやと男子生徒が入って来る。
 私の前で弁当を開きかけていたヨリと水瀬くんは、驚いた表情で顔を上げた。

「君達、何の用? ここは食堂じゃないよ」

 巨大な弁当箱を持っていた風間くんは、きょとんと首を傾げる。

「え? 有明さんが今日の昼飯はここに集合って」

 彼の言葉を受け、ヨリの視線が私に移る。経緯を話そうとしたところで、きららちゃんがきゃあっと高い声を上げた。

「猫がいるー! かわいい!」
「あ、あの時の財布泥棒!」

 室内にいたミスティを抱き上げたきららちゃんの横で、太郎くんが牙をむく。

「あの時はよくも俺の財布を……!」

 彼が目を三角にするも、ミスティは素知らぬ顔で鼻先をそっぽへ向けた。

「そう言えばこの子、生徒会室で飼ってるの?」

 気になって尋ねると、「いえ」と水瀬くんが説明する。

「ミスティは実は校長先生の飼い猫なんです。先生が出張でいない時、生徒会で預かっていて」
「そうだったんだ。通りで毛並みのいい猫ちゃんだもんね」
「かわいいですよね。祖父もたまに学校へ来ると、必ずこの子と遊んで帰るんです」
「水瀬?」
「あっ」

 ヨリの声に、しまった、と言わんばかりに慌てて水瀬くんが口を押さえた。