幼馴染(フィアンセ)。君はね、僕のことを生まれて初めて褒めてくれた存在なんだ。いつだって兄と比較されていた僕を一人の人間として認めて、慕ってくれた。ちなみにこのマスコットは君が小学生の時、家族と水族館へ行った時におみやげで買って来てくれたもの」
「……」
幼馴染(フィアンセ)の言う通り、僕は弱くて寂しがり屋で、人一倍依存心が強い性格だ。君や水瀬のように、僕を慕ってくれた人を縛り付けて、僕の元から離れられないようにしようとした。けれど、それは叶わなかった」
「水瀬が僕の言うことを聞かずに君を助けに行ったことが分かった時、僕は悟ったんだ。君達は僕が思っていたよりもずっと、ずっと強い心を持っているって」

 彼は振り返り、穏やかな表情で私を見つめた。

「いくら弱い人間とは言え、一応僕は生徒会長だ。ひどいことをしたお詫びに、君の願いを権限で叶えてあげよう。何がいい? なんでもいいよ。金輪際僕が君の前に現れないようにして欲しければそう言ってくれればいいし、進学のための内申点が欲しいのなら僕から先生に――」
「だったら」

 ヨリの言葉を遮り、私は、はっきりとした口調で彼に告げた。