流星とジュネス



 ヨリの家は寮からほど近い場所にある一軒家だった。
 家に人がいる気配はなく、インターホンを鳴らしても反応がない。

(いないか……)

 草花が喜びそうな大粒の雨が降りしきる中、傘を携えた私はヨリの家を後にする。
 当てもなく歩きながら、頭の中できららちゃんのメッセージを思い返した。

『わたしが久我君なら、こんな雨の日は青空を見に行きたいって思うかな』

(雨の日に青空って……どういうことだろう?)

 傘を傾け視線を上げれば頭上に広がる空は曇天で、彼の言う青空とはかけ離れている。
 こんな天気の中で青空を見られる場所と言ったらどこだろう。考えても思い当たる節はなく、何か手がかりを得られたらと私は鞄に入れていたチンアナゴを取り出した。
 目の前でぶらぶらと揺れるチンアナゴを眺めながら、そう言えば、と私は思い立つ。

(この町にも水族館があったっけ)

 そこにヨリがいる確証はなかったが、心の中の第六感が反応する。

(……行ってみるか)

 チンアナゴをポケットにしまい、私は駅の方角へ歩き出した。