(彼の想いが伝われば、どんなにヨリは救われるだろう)
あの時、ヨリはむき出しの執着心を露わにした。気に入った者――と言うより自らに従順な人間に、彼は常に飢えているのだろう。この世界での記憶は頭の中にはないが、ヨリが語っていた通り、幼い頃の私はきっと頭脳明晰な彼の言うことをよく聞く、いわば人形のような存在だったのだ。
ヒトが人形を求める時はどんな時か。
そんなことを考え、私は握っていたペンを置く。
(多分、一番寂しいのはーー)
その時、ピロン、と通知音が鳴り、スマートフォンがメッセージの受信を伝えた。
『海羽ちゃん、テスト対策してる? 私は全然進んでない~!』
こういうことを言う友人に限ってしっかり勉強しているものだ、と内心思いながら返事を送る。しばらく他愛もないやり取りを続けていたが、『気分転換に外に美味しいもの食べに行くのもアリだよね』と送って来た彼女のメッセージを皮切りに、私は思い切って尋ねてみることにした。
『きららちゃん、生徒会長の住所って、知ってたりする?』
『会長の持ち物、間違って持って帰っちゃったから返しに行きたくて』
即座に返って来た『勿論!』という言葉に、やっぱりと思うと同時に畏怖の念を抱く。腕力同様、彼女の情報網は決して敵に回してはならない。
『んーでも』
ヨリの住所の後に立て続けに送られて来たメッセージに、感謝の言葉を打ち込もうとしていた私の指が止まった。
『わたしが久我くんなら、こんな雨の日は青空を見に行きたいって思うかな』
あの時、ヨリはむき出しの執着心を露わにした。気に入った者――と言うより自らに従順な人間に、彼は常に飢えているのだろう。この世界での記憶は頭の中にはないが、ヨリが語っていた通り、幼い頃の私はきっと頭脳明晰な彼の言うことをよく聞く、いわば人形のような存在だったのだ。
ヒトが人形を求める時はどんな時か。
そんなことを考え、私は握っていたペンを置く。
(多分、一番寂しいのはーー)
その時、ピロン、と通知音が鳴り、スマートフォンがメッセージの受信を伝えた。
『海羽ちゃん、テスト対策してる? 私は全然進んでない~!』
こういうことを言う友人に限ってしっかり勉強しているものだ、と内心思いながら返事を送る。しばらく他愛もないやり取りを続けていたが、『気分転換に外に美味しいもの食べに行くのもアリだよね』と送って来た彼女のメッセージを皮切りに、私は思い切って尋ねてみることにした。
『きららちゃん、生徒会長の住所って、知ってたりする?』
『会長の持ち物、間違って持って帰っちゃったから返しに行きたくて』
即座に返って来た『勿論!』という言葉に、やっぱりと思うと同時に畏怖の念を抱く。腕力同様、彼女の情報網は決して敵に回してはならない。
『んーでも』
ヨリの住所の後に立て続けに送られて来たメッセージに、感謝の言葉を打ち込もうとしていた私の指が止まった。
『わたしが久我くんなら、こんな雨の日は青空を見に行きたいって思うかな』
