*
「海羽ちゃーん。お昼ご飯今食べないなら冷蔵庫に入れておくからね」
階下から聞こえて来たヒロミさんの声に、「はーい」と声を張り上げて返事をする。
先刻から学習机に教科書を広げているものの、中身はちっとも頭に入って来なかった。
「はあ……」
視線をずらすと、机上に置いたチンアナゴと目が合う。
昨日水瀬くんによって生徒会室を脱出した私は、迂闊にもヨリのものと思われるマスコットを持ち帰ってしまったのだ。休日明けにでも返せば済む話なのだが、昨日の一件があった以上、話をするのはどう考えても気まずい。
『会長は僕を拾ってくれたんです』
もやもやした気持ちでチンアナゴを眺めていると、水瀬くんとの会話が頭の中に蘇る。
『訳あって、僕は入学してから同級生に仲間外れにされることが多くて』
『一人ぼっちだった僕に、会長は生徒会の副会長と言うポジションを与えてくれたんです。僕は拾ってもらったあの日から、会長について行くと決めました』
『だけど、彼について行くことは即ち、全ての判断を彼に委ねると言うことではないと思っています。確かに会長にとって今の僕は都合のいい手駒に過ぎないかもしれません。だけど……正しいことは正しい、間違っていることは間違っている。いつか対等な立場で、会長の隣に立つことができたらいいなと思っています』
「海羽ちゃーん。お昼ご飯今食べないなら冷蔵庫に入れておくからね」
階下から聞こえて来たヒロミさんの声に、「はーい」と声を張り上げて返事をする。
先刻から学習机に教科書を広げているものの、中身はちっとも頭に入って来なかった。
「はあ……」
視線をずらすと、机上に置いたチンアナゴと目が合う。
昨日水瀬くんによって生徒会室を脱出した私は、迂闊にもヨリのものと思われるマスコットを持ち帰ってしまったのだ。休日明けにでも返せば済む話なのだが、昨日の一件があった以上、話をするのはどう考えても気まずい。
『会長は僕を拾ってくれたんです』
もやもやした気持ちでチンアナゴを眺めていると、水瀬くんとの会話が頭の中に蘇る。
『訳あって、僕は入学してから同級生に仲間外れにされることが多くて』
『一人ぼっちだった僕に、会長は生徒会の副会長と言うポジションを与えてくれたんです。僕は拾ってもらったあの日から、会長について行くと決めました』
『だけど、彼について行くことは即ち、全ての判断を彼に委ねると言うことではないと思っています。確かに会長にとって今の僕は都合のいい手駒に過ぎないかもしれません。だけど……正しいことは正しい、間違っていることは間違っている。いつか対等な立場で、会長の隣に立つことができたらいいなと思っています』
