「アムールゲームスはね、元々コンシューマーゲーム専門のソフトを制作する会社だったの。あ、コンシューマーゲームって言うのは、ゲーム機を使って遊ぶソフトのことね。『ジョイステーション』とか『スケッチ』とか」
「そのくらいなら私も聞いたことがあります」
「なら話が早いわ。ただ、最近は専らスマホでゲームが遊べるようになったじゃない? いちいちゲーム機を持ち歩いたり家のテレビに繋いで遊ぶよりも、ゲームもスマホで遊べちゃった方がずっと楽。アムールはそんな流れについて行けなかったのよね。元々の開発メンバーも少なかったみたいだし、気付けばあっという間にユーザーが他社からリリースされるスマホのソーシャルゲームに奪われてしまって、結局昨年破産してしまった……というのが一連の流れ」
「それでハイクレックスがアムールゲームスを買収した、と」
「ええ。あなたも既に誰かから聞いているかもしれないけれど、うちの社長……大島哲郎(おおしまてつろう)がクマPと飲み仲間だったみたいで」
「クマP?」

 首を傾げると、横江さんは「熊谷准(くまがやじゅん)のことよ。アムールゲームスのプロデューサー」と、私の手元を指さした。

「それ、裏返してみて。スタッフの一覧に名前があるから」

 言われるがままにパッケージを裏返す。確かに数名のスタッフの名前が書かれた欄の一番上に、『熊谷准』の文字があった。