流星とジュネス



(ヨリ、待ってるかな)

 これまでヨリとの約束に遅れたことはなかったが、要領がいい彼のことだ。きっと生徒会の仕事でもしながら待っていてくれていることだろう。
 そんな軽い気持ちで私は生徒会室のドアを開けたのだが。

「ごめんね、ヨリ。遅くなってーー」

 目の前に広がる光景に、ひゅっと喉の奥が鳴る。
 室内にいたヨリは、一匹の猫を抱いて立っていた。

「やあ、幼馴染(フィアンセ)

 穏やかな笑みをたたえ、ヨリはこちらへ近寄って来るが――
 私を見つめる彼の瞳は、氷のように冷たかった。

「こんな時間まで、何をしていたんだい?」
「わ、私……」

 脳内に警報音が鳴り響く。
 これ以上彼を刺激してはならない。本能的に察知した私は彼の問いに対する最適解を探した。

「友達の手助けをしていたの」
「僕との約束をさし置いて?」

 全ての終わりを示すかのように、背後でバタンとドアが閉まる。恐らくこの解答は誤りだった、そう思った時には後の祭りだった。