流星とジュネス

 カフェテリアにドアが開け放しになっている空き教室、猫が喜びそうな丸いボールが転がる体育館――
 目ぼしい場所は一通り探したものの、猫の姿は見えない。

「見つからないね、猫」

 歩き回ったせいで疲れてしまい、二人で中庭のベンチに腰を下ろす。
 夏へ向け、近頃の気温は上がるばかりだ。
 額に滲んだ汗を思わず手の甲で汗を拭えば、私の隣に座っていた太郎くんは「今月のお小遣いもらったばっかりだったのに……」と頭を抱えた。

「足の速さじゃ勝てないもんね、多分」
「猫じゃらしとかでおびき寄せるとか?」

 とりとめのない会話を繰り広げていると、「あの」と小さな足音と共に遠慮がちな声が降り注ぐ。
 顔を上げると、一人の女子生徒が二つ折りの財布を持って立っていた。

「財布、探してますか?」
「それ!!」

 太郎くんが弾かれたように立ち上がる。
 ぱっつんの前髪と長く伸びた黒髪が印象的な女の子は、ほのかにそばかすの散る頬を赤らめて言った。