流星とジュネス



 ヨリとの勉強会はその後も絶えることなく続いた。織也くんの残した言葉は気にかかったが、だからと言って理由もなくヨリの厚意を断る訳にも行かない。実際、彼のおかげで授業中に理解できずにいた箇所は大方がクリアになっていた。

 週明けに試験を控え、今日が最後の勉強会だ。
 指導のお礼にと調達した焼き菓子を携え、私は生徒会室へ向かっていた。

「わっ!」

 突然廊下の曲がり角で走って来た男子生徒とぶつかりそうになり、慌てて身体を逸らす。
 誰かと思って顔を見れば、血相を変えた太郎くんが立っていた。

「わ、有明さんか。ごめん」
「どうしたの? 顔、真っ青だけど」
「実は猫にお財布取られて……」
「え!?」

 どこの日曜夕方アニメだ、と突っ込みたくなる気持ちを押さえる。彼が盗られたのはお魚ではなくお財布のようだが。

「テストが近いから、真面目に勉強してたんだけど」

 話を聞くと、太郎くんは一階の自習室にいたらしい。窓際の机の上に財布を置いていたことが災いし、窓から突然飛び込んで来た猫が財布を咥えて持って行ってしまったのだそうだ。

「でも、ここまで歩いて来るのに見かけなかったよ、猫」
「そっか……どうしよう。全財産入ってるのに……」

 私の言葉に太郎くんはがっくりと肩を落とす。そんな彼を見捨てることもできず、私はぐるりと周囲を見渡した。

「良かったら一緒に探すよ。今ならそんなに遠くまで行ってないかもしれないし……」

 協力すると言ったものの、どこから探せばいいのかさっぱり検討がつかない。
 仕方なく私と太郎くんは、心当たりのありそうな場所をしらみつぶしに見て回ることにした。