流星とジュネス



 自動販売機の前で迷っていると「どれがいい」と低い声が聞こえる。

「え? じゃあこれ」
「ん」

 オレンジジュースを指さすと、隣に立った織也くんは小銭を入れ、取り出し口に落ちた紙パックを私に差し出した。

「あ、ありがとう」

 図らずも年下におごってもらってしまった。

(こう言うことをさらっとしちゃうから、ファンクラブができるんだろうな……)

 若干の罪悪感を抱えつつ、私はオレンジジュースを受け取る。
 カフェオレのパックにストローを突き刺しながら、織也くんは壁に寄りかかった。

「お前、最近生徒会長とつるんでるみたいじゃん」
「テストが近いから、勉強を教えてもらってるの。私とヨリ、幼馴染だったんだって」
「『ヨリ』?」
「うん。彼がそう呼んでって」

 ストローをくわえたまま怪訝な表情を浮かべる織也くんは、「やっぱ幼馴染属性は手強いな」と呟く。どういうこと、と尋ねると、彼は答えずに首を振った。

「ま、気を付けた方がいいんじゃない? あいつ外面はいいけど、見るからに執念深そうな顔してるじゃん。今の地位も全部あいつが望んで手に入れたものだし、一回目付けられたら身動き取れなくなるぞ」

 棘のある言い方に、織也くんのヨリに対する若干の嫌味を感じる。
 そこまで言われる筋合いはないんじゃないか、そう思った私はむっとして言い返した。