火曜日が訪れ、私は約束通りヨリに勉強を教えてもらうために生徒会室を訪れた。
 生徒会の組織と関わりを持たない限りはこの部屋を訪れる機会はほとんどないだろう。思い返せば高校に在学していた頃も、実際に訪れたことはおろか生徒会室がある場所すら把握していなかった。 

「失礼します」

 ドアをノックして中へ入ると、執務机で作業をしていたヨリが顔を上げる。

幼馴染(フィアンセ)、いらっしゃい」

 デスクから立ち上がったヨリは優しい笑みを浮かべて私を迎え入れた。

「さあ、ここに座って」
「ありがとう」

 示された来客用のソファに腰を下ろす。
 ヨリは壁際の本棚でファイルを開いていた青年に「水瀬、お茶を二つ」と声をかけた。

「了解しました」

 彼も生徒会のメンバーなのだろうか。水瀬と呼ばれた青年は落ち着いた口調で答えると、ファイルを本棚に仕舞って生徒会室を後にする。
 ヨリと二人きりになった空間で、私はぐるりと室内を見回した。