「滉平、惚れちゃだめだよ。海羽ちゃんは『訳アリ』なんだから」

　ポップコーンを頬張るきららちゃんに、「惚れないって！」と風間くんは慌てて首を振る。

「聞いたよ。有明さんもこの世界に迷い込んじゃったんだっけ？　色々大変な事情があったんだな」
「そうなの。とりあえず今は主人公としてこの学校で生活してるけど――何とかして元の世界に戻る方法を探さなくちゃいけないんだ」
「てことはいつかはきららたちともさよならしなきゃいけなくなっちゃうってことだよね。海羽ちゃん」

　寂しげに視線を落とすきららちゃんに、胸の奥がちくりと痛む。

（いくら、作られた存在だとしても）

　私の目から映る彼らは、とうに造形物としてのイメージを凌駕していた。
　胸の痛みが、現にそれを証明している。

「きららちゃん……」
「ううん、」

　長い睫毛を伏せていた彼は、顔を上げると無理に作ったような笑顔を私に見せた。

「それでも嬉しいよ。わたし、海羽ちゃんと会えるのをずっとずーっと、待ってたんだもん。いつか海羽ちゃんは元の世界に帰っちゃうかもしれないけれど、それまでは皆で一緒にいよう」

　きららちゃんの言葉に、じわりと目の奥が熱くなる。「俺だって嬉しい」と、隣で風間くんも頷いた。