全生徒が待ち詫びているであろう夏休みまで一ヵ月を切り、蒼遥高校では中間考査が近付いていた。
かつて通った道とは言え、油断は禁物だ。下手な成績を取ってゲームオーバーになる訳にも行かないため、私もここ数日は真面目に授業を受ける日々が続いている。
そんなとある平日の朝のこと。
洗面台で歯を磨いていると、じょうろを持ったヒロミさんが外から戻って来た。
「海羽ちゃん、素敵な男の子が迎えに来てるわよ」
とうとう海羽ちゃんにも運命の相手が、とヒロミさんはやけに嬉しそうだ。
(誰だろう?)
寮が高校から近いこともあり、登校時はいつも一人だ。ヒロミさんがはっきり男の子と認識したところを見ると、少なくともきららちゃんではないことが分かる。となると(素敵かどうかはここでは置いておくとして)織也くんだろうか。
「帰ったらお赤飯用意しておくからね」
はしゃぐヒロミさんを背に、私は用意を済ませると寮のドアを開ける。
『コーポ・エトワール』と書かれた門の下で、制服を着た見知らぬ青年が一人で立っていた。
「あなたは……」
言い終わらないうちに、私の言葉は彼の抱擁によって遮られる。
かつて通った道とは言え、油断は禁物だ。下手な成績を取ってゲームオーバーになる訳にも行かないため、私もここ数日は真面目に授業を受ける日々が続いている。
そんなとある平日の朝のこと。
洗面台で歯を磨いていると、じょうろを持ったヒロミさんが外から戻って来た。
「海羽ちゃん、素敵な男の子が迎えに来てるわよ」
とうとう海羽ちゃんにも運命の相手が、とヒロミさんはやけに嬉しそうだ。
(誰だろう?)
寮が高校から近いこともあり、登校時はいつも一人だ。ヒロミさんがはっきり男の子と認識したところを見ると、少なくともきららちゃんではないことが分かる。となると(素敵かどうかはここでは置いておくとして)織也くんだろうか。
「帰ったらお赤飯用意しておくからね」
はしゃぐヒロミさんを背に、私は用意を済ませると寮のドアを開ける。
『コーポ・エトワール』と書かれた門の下で、制服を着た見知らぬ青年が一人で立っていた。
「あなたは……」
言い終わらないうちに、私の言葉は彼の抱擁によって遮られる。