流星とジュネス

「風間くんだ……!」

 コートの中央に向かい合う風間くんと二組の男子生徒の間に立ち、審判がボールをトスする。軽やかに跳躍した彼の掌が、空中に舞うボールに触れた。

「頑張れー! 一組ー!」

 空気が変わる、とはまさにこのことを示すのだと私は思った。風間くんは目にもとまらぬ速さで相手チームのブロックをかわし、次々とゴールを決めて行く。彼の勢いに触発され、前半では押され気味だったチームメイトも果敢に攻め込む態勢に変化した後、五分が経過する頃には一組がリードする形となっていた。
 思わぬ逆転劇に焦ったのだろう。つい熱くなった二組のチームメンバーがシュートをしようとしていた風間くんの手を叩き、二組はファウルを与えられる。反則を受け、一組にはフリースローのチャンスが与えられた。

「あれが決まれば一組の勝ちだな」

 真剣な表情の織也くんの隣で、私は固唾を呑んでコートを見つめた。
 観客席に座る私達をバスケットゴールが挟むような形で、ボールを持った風間くんが対峙する。スリーポイントラインに立つ彼とゴールの距離は決して近いとは言えず、握りしめた掌はじっとりと汗で湿った。

「決められるかな……」

 思わず呟いた私に、「決まるよ」と凛とした声が返って来る。はっとして横を向くと、旭くんはコートを見つめたまま、言った。

「だって僕のお兄ちゃんだから」

 ボールを頭上に構えた風間くんが、一瞬だけにやり、と笑った気がする。
 彼の手から放たれたボールは、導かれるようにゴールへと吸い込まれて行った。