流星とジュネス

「お兄ちゃん!」

 少年はベッドから飛び降り、ぱたぱたと風間くんの元へ駆け寄る。

「お、元気そうだな」
「うん。今日は発作も起きてないし、午前中は中庭でお絵描きもできたんだ……あれ?」

 風間くんから視線をずらした旭くんと目が合う。

「旭にお客さんだよ。四月に俺のクラスに転校して来たんだ」
「初めまして、旭くん。有明海羽です」

 挨拶をすると、旭くんはつぶらな瞳をきらきらと輝かせた。

「お兄ちゃん、彼女できたの!?」

 肉体派の兄を持ちながら、弟の方は随分ませているようだ。
 「いやいや」「そうじゃなくて」と否定する私達をよそに、旭くんは「風間旭です。兄がお世話になってます」と礼儀正しく頭を下げた。

 太郎くんから聞いていた通り、旭くんは人生のほとんどを病院で過ごしているらしい。
 個室の中はシンプルながらも大きな本棚やテレビが置かれており、一日を過ごしていても飽きないような工夫が施されている。
 私達はベッドのそばに置かれたソファへ腰を下ろし、旭くんとのおしゃべりを楽しんだ。

「へえ、今月球技大会があるんだね」
「風間くん、すごいんだよ。クラスの皆にお願いされて、バスケもサッカーもハンドボールも出場するの」
「別にできる奴が少ないから出るだけだよ。俺一人の力で優勝できるって訳でもないし」

 照れたような表情の風間くんをよそに、旭くんは「さすがお兄ちゃん」と嬉しそうだ。
 笑顔を浮かべる旭くんをもっと喜ばせたくて、私は風間くんの武勇伝を披露する。

「この前もすごかったんだよ。昼休みに男女別でドッジボールやったんだけど、風間くん一人だけコートに残って――」

 ガラリとドアが開く音に、言葉が途切れる。
 振り返ると病室の入口に白衣姿の中年男性が立っていた。