通学路の桜並木は花びらが散り、瑞々しい若葉が目立つようになっている。
 放課後、私は風間くんと共に校門前のバス停に立っていた。

「お見舞い、突然一緒に行きたいなんて言ってごめんね」
「確かに急に言われた時はびっくりしたけどさ。色んな人が見舞いに来てくれたら旭も喜ぶだろうし、良いってことよ」

 太郎くんから風間くんが弟の元へ行くスケジュールを聞き出した私は、彼が放課後病院へ行くタイミングを見計らって同行を申し出た。

(突然リクエストしたから風間くんは驚いてたけど――)

 「転校したばかりだからクラスメイトのことをもっと知りたくて」とそれらしい理由を話すと、彼はあっさり承諾してくれた。

 十分ほどバスに揺られ、私達は町中にある総合病院へ到着する。

「あら、旭くんのお兄ちゃん。こんにちは」
「こんにちは。旭、病室いますか?」
「ええ。さっきまで食堂でおやつ食べてたけど、もう戻ってると思うわ」

 受付の帳簿に名前を書き、風間くんは慣れた様子で院内のスタッフと言葉を交わす。そして廊下を進んで行くと、突き当たりにある病室で足を止めた。

「旭、開けるぞ」

 スライド式のドアを開けると現れる、白い個室。
 室内のベッドで本を読んでいた少年は物音に気付き、ぱっと顔を上げた。