「紹介が遅れたけど、こちら織也くんのクラスメイト。風間くんと仲良しなんだって」

 二人が席へ戻って来たタイミングで私が紹介すると、彼は「どうも」とぎこちなく会釈をする。

「お前、いつもサッカー部の連中とつるんでるよな。名前は?」
「そ、それが……」

 口ごもってしまった彼をフォローするように、私は「ないんだよね」と会話を繋いだ。

「てことはモブ君ってこと?」
「確かに何の取り柄もなさそうな顔してるもんな」

 きららちゃんと織也くんは彼を見つめながら、ワイドショーに登場するベテランのスタイリストばりに辛辣なコメントを次々と投げつける。
 悪気はないはずなのだが直接言われるとやはりダメージが大きいようで、彼はたちまち涙目になると私にすがり付いた。

「有明さん、やっぱり俺帰りたい……!」
「だ、大丈夫だって。そもそも風間くんの情報を教えてくれる代わりに手芸部の活動に連れて来てって言ったのはあなたじゃない」

 『一組の東雲きららちゃんと一度でいいから話がしてみたい』――

「わー! ストップストップ!!」

 口に出しかけた言葉は、じたばたと慌てる彼によって遮られる。

「確かに頼んだのは俺だけど、やっぱりモブの自分がこんな眩しいメンツに囲まれるてなんて耐えられないよ。どうせモブはモブらしくモブ同士でつるんでればいいんだ……」

 塞ぎこんでしまったモ……ではなく男子生徒を前に、どうしたものかと私は考えを巡らせる。
 きららちゃんが声を上げたのは、その時だった。