考えてみれば少女漫画でもラブストーリーの映画でも、主人公の相手になる男性キャラクターは大抵イケメンだったり資産家の御曹司だったり、女の子が憧れるような肩書きを持っていることが多い。『約束のエトワール』だって、きっとユーザーとなる女性に喜んでもらえるような攻略キャラクターを用意しているのだろう。

「じゃあ、滉平君は『朗らかスポーツマンキャラ』ってことだね」
「お、お前も分かって来たんじゃねえの」

　喜ぶべきところなのかは分からないが、褒められて嫌な気はしない。何よりこの世界で暮らす人々を理解することは、自分が元の世界へ帰る手がかりを掴むきっかけになるかもしれないのだ。

「俺もクラスが違うから詳しいことは分かんねえけど……にしても学年一の運動神経持ってて、体育会系の部活に何も所属してないってのも変な話だよな」
「あ。それ、私も本人から聞いて引っかかってたんだ。実は風間くんスポーツがすごく嫌いだったりして？」
「だったらこんなに色んな部活の試合に顔出したりしねえだろ」
「うーん、確かに……」

　闇なんて一切抱えていないような顔をしているのに。
　風間くんの本心を知ろうとすればするほど、謎は深まるばかりだ。

「あいつの情報が知りたいんだったら、俺よりももっと仲がいい奴に聞いてみたらどうだ？」

　織也くんの言葉に、風間くんを迎えに来た男子生徒の姿が思い浮かぶ。親切な彼なら、何か教えてくれるかもしれない。
　相変わらず非の打ち所がないほどに完璧なプロポーションで佇む織也くんに、私は「そうだね」と頷いた。